キャリア史上一番のスランプ!? 大手馬主からの騎乗依頼は激減…成績低迷が続く「G1請負人」に復活の道はあるのか
今年の中央競馬が開幕し2か月が経った。パンサラッサによるサウジC(G1)制覇、福永祐一元騎手の調教師転身など、年明けから大きな出来事がたくさんあったが、春のG1シーズンに向けて競馬界は更なる盛り上がりを見せている。
ふと騎手リーディングの順位表に目を向けると、先週の開催を終えた時点のリーディングは川田将雅騎手とC.ルメール騎手がともに29勝で勝利数タイ。今年もこの2人がリーディング争いを繰り広げそうだ。
一方、昨年の13位から大きく順位を落としているのが7勝で28位のM.デムーロ騎手だ。
2015年にJRA所属騎手となって以来、ルメール騎手とともにリーディング争いの常連だったデムーロ騎手であるが、近年は思うような成績が残せていない。
成績低迷が続く「G1請負人」に復活の道はあるのか
JRA年間153勝をあげた2018年を最後に年間100勝に到達した年はなく、重賞勝利も同年までは毎年のように二桁勝利をあげていたが、19年以降は一桁台で推移している。また、大レースでの勝負強さを武器に数多のG1タイトルを獲得していたが、昨年はG1を勝つことができなかった。
そして、まだ始まったばかりとはいえ、今年はこれまで以上に成績を落としていることも気になる。
昨年は同時期(3月1週終了時点)までに16勝をあげていたが、今年の7勝は半分以下。ここまでの勝率も6.1%とJRAに所属して以降でキャリア史上最低の数字。8年連続で年間勝率10%以上を保ってきた名手が、この調子のままなら厳しそうだ。
成績低下の原因の一つと考えられるのが、日本競馬における最大グループであるノーザンファーム生産馬への騎乗が激減していることかもしれない。
2018年にはノーザンファーム生産馬に181レースで騎乗していたが、昨年は50レースにまで減少。今年の騎乗は4レースのみで、以前に比べて関係が冷え込んでいる印象だ。これに伴いノーザンファーム系のクラブ(サンデーレーシング、キャロットファーム、シルクレーシング)の所属馬の騎乗も激減。全盛期には年間約70レースで騎乗していたが、昨年は19レースのみ。そして今年はなんと1回だけとなっている。
また、以前に福永騎手から「ミルコはスタートが苦手。出遅れる率が高い」と指摘されたこともあったように、デムーロ騎手自身の“ゲート難”も成績低下に影響しているのかもしれない。
今年の騎乗レース114戦のうち4角で10番手以下にいたレースは34にのぼる。もちろん、その全てが出遅れのせいではないし、馬の癖による出遅れもあるだろう。とはいえ、ゲートが遅かったゆえに好位置を取れないケースも目立つ。勝負所で勝てるポジションにいなければ勝ち鞍が増えないのも当然と言えよう。
そんなデムーロ騎手にとって、G1勝利を期待できる馬だった2021年のオークス馬、ユーバーレーベンが屈腱炎のため、競走馬を引退したことも3日に分かったばかり。巻き返しを期すデムーロ騎手からすれば、ショッキングな出来事だったのではないか。
気さくな人柄と競馬への情熱でファンも多いデムーロ騎手。大舞台を得意とする度胸と思い切りの良さでG1請負人として名を馳せた名手だけに、今年こそ再ブレイクに期待したい。