「目標とする騎手は武豊」レジェンド大活躍の裏で苦戦続き…伸び悩む若手の有望株に訪れた再浮上の転機

秋山稔樹騎手

 先週の大阪杯(G1)をジャックドールとのコンビで制し、G1・80勝を達成したのは競馬界のレジェンドこと武豊騎手だ。今年でデビュー37年目の54歳を迎えても、その華麗な手綱捌きでファンを虜にしている。それだけに競馬界で最もメジャーな人物でもある武豊騎手を慕う後輩騎手も多い。

 今週末の桜花賞(G1)では、弟の武幸四郎調教師が管理するライトクオンタムに騎乗を予定。歴代最多の桜花賞5勝を挙げている「桜花賞男」の手腕は注目だ。

 デビュー時の目標とする騎手という質問に対し、「目標とする騎手は武豊騎手で、馬と折り合わせる技術に優れていると思うからです。謙虚さと感謝の気持ちを忘れず、馬のことを第一に考えた騎手になりたいです」と答えた秋山稔樹騎手もまたその一人である。

 実際、秋山稔騎手のデビュー1年目は、19勝でトップの泉谷楓真騎手に次ぐ17勝を挙げて同期で2番目の成績。これで評価も上がったのか、2年目には42勝と躍進した。

 ところが、3年目の2022年には20勝と勝ち鞍は半減し、今年は先週の開催を終えた時点でわずか1勝。若手の有望株として評価されていたことを思えば、少々伸び悩んでいるといえるだろう。

伸び悩む若手の有望株に訪れた再浮上の転機

 そんな秋山稔騎手だが、これまでエージェントを担当していた町田周平氏から松本ヒロシ氏と組む事が正式に発表された。本人なりに考えてのことだろうが、このタイミングでエージェントの変更を決断したようだ。

「少し前にエージェントがいなくなったことでも注目されていましたが、水面下で専門紙の記者に打診をしているらしいという噂は確かにありました。決まり次第、正式な発表があると見られていたのですが、最終的に松本氏に落ち着いたということでしょう。

2年目にブレイクしかけた秋山稔騎手ですが、3年目は勢いに陰りが見え始め、昨年10月以降、急に勝てなくなりました。これには本人もかなり悩んでいたみたいです。兄貴分の松岡正海騎手に相談したところ、自身と同じエージェントの松本氏を紹介されたそうですよ。

これまで全く接点のなかった2人が、数週間前からトレセンでちょくちょく話している姿を目撃されていましたから、周りの関係者も察しがついたでしょう」(競馬記者)

 この影響もあったのか、先週の開催でようやく今年の初勝利を挙げた。前回勝利したのが昨年の10月半ばだったのだから、秋山稔騎手にとって約半年ぶりに味わった勝利の美酒ともなった。

 コンビを組んだのは自身が所属している蛯名利弘厩舎の馬ということもあり、“松本氏効果”とはいえないが、多少なりともメンタル面でのリフレッシュ効果はあったのではないか。

 松本氏は競馬の予想番組や解説などもこなしているだけあって分析力に長けた人物。他に担当している松岡騎手や北村宏司騎手とも、時間をかけて騎乗馬の癖や性格、同じレースに出走する他馬の動向なども細かく調べてアドバイスしているようだ。

 騎手という職業はメンタル面が大きく左右する。好調なら積極的な位置取りで好騎乗を見せることもあれば、不調なら徐々に消極的な騎乗になっていく。環境の変化によって秋山稔騎手も心機一転といったところだ。

 今週から始まる福島は若手にとって重要な開催となるだけに、関係者にどれくらいアピールできるか注目したい。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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