「30戦0勝」横山和生、「51戦2勝」川田将雅をC.ルメールが圧倒!? 天皇賞・春(G1)の「3強」馬は互角でも…
昔から競馬は「騎手3:馬7」と言われているが、こと「長距離戦は騎手の腕」と言われる3000m以上の長丁場に限れば、騎手の重要性はさらに増すこととなるだろう。
実際に近年の天皇賞・春(G1)の勝利騎手を振り返っても、歴代最多の8勝を誇る武豊騎手を筆頭に、福永祐一騎手、C.ルメール騎手、岩田康誠騎手、横山典弘騎手、蛯名正義騎手など、ほぼJRAで1000勝以上を挙げている名手ばかり。
もしかしたら3000m以上に限っては騎手4:馬6……いや「騎手5:馬5」といっても過言ではないかもしれない。今週末30日に開催される天皇賞・春でも「ジョッキー」は通常のレースよりも重要なポイントになりそうだ。
その上で、今年の長距離王決定戦はタイトルホルダー、ジャスティンパレス、ボルドグフーシュの三つ巴の戦いになることが予想されている。
一昨年の菊花賞馬であり、昨年の天皇賞・春の勝ち馬であるタイトルホルダーの長距離実績は言わずもがな。明け4歳のジャスティンパレス、ボルドグフーシュは昨年の菊花賞(G1)で3着、2着。今年の阪神大賞典(G2)で1着、2着とほぼ互角の強豪だ。天皇賞・春は芝3200mというG1で最も長い距離を走るレースだが、この3頭はどの馬が勝ってもまったくおかしくないだろう。
「3強」馬は互角でも…
だが、その一方で肝心のジョッキーでは大きく明暗が分かれている。
近年の活躍が目覚ましい横山和生騎手の「3000m以上の戦績」は10戦1勝。ただし、この1勝がタイトルホルダーとのコンビでゲットした昨年の天皇賞・春だから、極めて説得力のある「1勝」だ。
また、これまで苦労の多かったジョッキーだけに、10戦で1番人気馬の騎乗はゼロ。昨年の天皇賞・春の2番人気が最高で、チャンスの乏しい二桁人気馬の騎乗も少なくない。経験値に多少の不安はあるが、乗り慣れた相棒とのコンビなら心理面の不安はないだろう。
ただ、昨年の天皇賞・春は阪神開催。今年は、3年ぶりに京都で行われる。これが横山和騎手にとってネックになるかもしれない。
大規模なリニューアルを終えた京都競馬場だが、その大半はスタンドなどの施設面。コースに至っては4コーナーの出口がやや緩やかになった点以外に大きな変更点はなく、以前までの京都における経験や実績はそのまま通用しそうだ。
しかし、横山和騎手は京都で通算30戦して勝ったことがない。騎乗機会の少ない関東所属なので仕方のない面はあるが、2、3着が1度ずつあるだけで成績には大きな不安が残っている。
その京都で十分な実績を残しているのが、ボルドグフーシュに騎乗する川田将雅騎手だ。
関西所属のトップジョッキーだけに当然かもしれないが、京都の重賞通算25勝は威張っていい実績だろう。人気馬に騎乗する機会も多い川田騎手だが1番人気の勝利は7回しかなく、勝負強さも光っている。
だが川田騎手の場合、長距離実績が大きなネックになっている。通算51回騎乗して2勝は、トップジョッキーとしてはあまりに寂しい数字。最後の勝利は2020年1月の万葉S(OP)まで遡り、重賞となればビッグウィークで制した2010年の菊花賞と10年以上前の話だ。
昨年、念願の初リーディングを獲得し、いよいよ本格化した感のある川田騎手。だが、こと3000m以上はここ2年でも未勝利。シルヴァーソニックと挑んだ昨年の天皇賞・春も、スタート直後に落馬という憂き目に遭っている。現在の好調ぶりでどこまでカバーできるか、弱点克服に期待だ。
その一方で、ライバル2人に大きなアドバンテージを築いているのが、ルメール騎手だ。
ジャスティンパレスの鞍上を務めるこのフランス人騎手は、フィエールマンとのコンビで2019年、20年の天皇賞・春を連覇するなど3000m以上のレースで抜群の実績を誇っている。
特にJRAの所属騎手になった2015年以降は、24戦して【7.2.6.9】で3着以内率62.5%と抜群の安定感。3番人気以内なら同76.5%とさらに信頼感が増す。
長距離は悪くないが、京都に不安がありそうなタイトルホルダーの横山和騎手。京都実績は抜群だが、長距離に不安がありそうなボルドグフーシュの川田騎手。その一方で、長距離でも京都でも抜群の実績を残しているジャスティンパレスのルメール騎手。
馬の方で甲乙つけがたいと思っている人は、思い切ってジョッキーに振り切ってみるのも面白いかもしれない。