安田記念(G1)アンビシャスは待望の距離短縮ながら他馬の動向次第で「まさかの惨敗」も?陣営側の心配事は今年のマイル重賞に共通する……
確かに、今年のマイル路線を振り返ってみると、重賞とは思えないほどスローペースのレースがよくあった。例えば安田記念と同じ舞台で行われた2月の東京新聞杯は、逃げたブラックスピネルの刻んだ前半3Fが37秒2。過去30年を振り返っても不良馬場だった2002年と並び最も遅かったのだ。
4月頭に開催されたダービー卿CTも、施行距離がマイルに変更された1996年以降で2番目に遅いスローペース。もちろん年明けの京都金杯のように前傾ラップのレースもあったが、どちらかと言えば少数派だ。
せっかくの距離短縮もペースが遅ければ効用は薄い。要するにアンビシャスが悠々と走るペースとレースの流れがマッチしなければ意味がないわけで、距離がマイルでもペースが中距離並になれば結局ハミを噛んでしまうことになるだろう。
陣営の不安を一層あおるのが、出走馬の顔ぶれ。人気のイスラボニータやエアスピネルから、新参者のグレーターロンドンまでざっと見渡しても、ハイペースを助長するような逃げ馬は皆無。むしろ昨年まさかの逃げ切りを披露したロゴタイプが今年もハナを奪いそうなメンバー構成で、マイルG1らしいハイペースは望むべくもない。
ちなみに香港勢2頭の内、コンテントメントは前走のチャンピオンズマイルで序盤は先頭に立っていたものの、前半3Fのペースは目視できる範囲で36秒後半~37秒前半といったところ。お世辞にもスピード抜群の逃げ馬というタイプではない。
もちろんゲートが開いてみれば、人気薄の馬がまさかの大逃げという展開もありえなくはない。そこは競馬なのだから、どんなペースにだってなる可能性はあるだろう。ただ、必ずハイペースになるかと問われれば、それも怪しい。要するに、アンビシャスにとって好ましいペースになるかどうかは神のみぞ知るところなのだ。
待望の距離短縮も、アンビシャス復活の有効手となるかどうかは未知数。なんとかレースの流れに乗って潜在能力を出し切ってほしいものだが……。