「14番人気2着→11番人気1着」ベテラン騎手の連続激走で「チャレンジ」大成功!? 有馬記念に挑んだ相棒のオーナーへ感謝のメモリアルV
9日の中山5Rに行われた2歳新馬戦(芝1600m)。勝ったのは母に凱旋門賞馬デインドリームを持つ良血ドリーミーデイだった。
「それほど馬を苦しめずに勝てました。もう少しパワーアップしてくると思います」と、騎乗した田辺裕信騎手はレース後に伸びしろを強調。今年8月に惜しくもこの世を去った母の分まで、同馬にかかる期待は大きいものとなりそうだ。
そんな勝ち馬には2馬身差で及ばなかったものの大きなインパクトを残したのが、2着に追い込んだミサトベレーザ(牝2歳、美浦・勢司和浩厩舎)である。
というのも同馬は15頭立てのブービー14番人気、単勝181.3倍という超人気薄。さらに中央にはわずか2頭しかいない、種牡馬タニノギムレットのラストクロップの1頭でもあったからだ。
レースでは先行集団を見る形でインを巧みに回り、最後の直線は上がり最速タイの末脚で2着。今回の競馬内容を見る限り、そう遠くないうちに初白星のチャンスがやってくるだろう。
また、そんな超穴馬ミサトベレーザを馬券圏内に導いたのが武士沢友治騎手だ。
来年2月に46歳を迎えるベテランの武士沢騎手。先日、調教師試験に合格した秋山真一郎騎手とは同期である。かつてはトウショウナイトやマルターズアポジーらとともに重賞戦線で活躍したものの、近年は勝ち星が減り、今年もここまでわずか2勝止まり。騎乗馬のほとんどが単勝万馬券の超人気薄という苦戦が続いている。
しかし、それでも武士沢騎手が競馬ファンに愛されているのは、そんな超人気薄で時々穴をあけてくれるからだ。熱心な穴党の間では「武士沢チャレンジ」という武士沢騎手の穴馬を狙って買うネットスラングさえ生まれている。
ミサトベレーザで同騎手は約2ヶ月ぶりとなる馬券圏内を果たすと、複勝2950円をつけただけに、“武士沢信者”にとっては久々のチャレンジ大成功だったといえるだろう。
ただ、この日の武士沢騎手が魅せたのはミサトベレーザだけではなかった。
次の騎乗となった8Rの3歳以上1勝クラス(ダート1800m)では、11番人気の穴馬シグナルファイアー(牝3歳、美浦・水野貴広厩舎)とコンビ。出遅れ癖のある同馬はこの日もスタートで後手を踏んでしまい、後方からの競馬を余儀なくされることとなる。
厳しい展開だったが、2番枠だったこともあり終始インコースを進み、そのまま4コーナーを回る。直線を向いたところで少し外に持ち出すと、進路がポッカリと開いた。武士沢騎手が渾身の右ステッキを振るうと、シグナルファイアーもそれに応えて脚を伸ばし1着。同騎手は約4ヶ月ぶりとなる今年3勝目を挙げるとともに、単勝50.5倍、三連単22万馬券という波乱を演出した。
騎乗機会2レース連続で穴馬を激走に導いただけに、SNSやネット掲示板などには「ブッシーすごすぎる」「1日2回も人気薄を持ってくるとは」「ありがとうございます!」「チャレンジ大成功じゃないか」といった多くの称賛コメントが寄せられたことは言うまでもない。
有馬記念に挑んだ相棒のオーナーへ感謝のメモリアルV
「今回の勝利でシグナルファイアーを所有する藤田在子オーナーは、JRA通算100勝を達成。藤田氏といえば武士沢騎手とのコンビで重賞3勝を挙げ、2016年の有馬記念(G1)にも出走すると、後続を引き離す逃げでファンを沸かせたマルターズアポジーの馬主でもあります。
武士沢騎手にとってもお世話になっているオーナーのメモリアルに貢献できただけに、この1勝は特別なものとなったのではないでしょうか」(競馬誌ライター)
ちなみにシグナルファイアーは、武士沢騎手がデビュー戦から手綱を取り続けている、お手馬の1頭。レース後には「コンスタントにレースを使われたことで調子を上げていたようです。連闘策もよかったです」と相棒についてコメント。今後も人気にかかわらず侮れない1頭となりそうだ。
先月21日にはフリーから、美浦の小手川準厩舎に所属変更となった武士沢騎手。これからも人気薄での激走はもちろん、いぶし銀の活躍でファンを魅了し続けてくれることに期待したい。