キタサンブラックは宝塚記念で何故逃げなかったのか？ 「消極的」に見えた武豊騎手の騎乗に批判集中も、確かにあった「勝利の道」
編集部
しかし、思わぬアクシデントによって武豊騎手の”ラッキー”は破綻してしまう。
思えば、この時点から武豊騎手にとっては”不吉”な1日だったのかもしれない。というのもヒシマサルが、スタート直前にゲートを突き破って飛び出してしまい放馬してしまったのだ。
幸い400ｍほど疾走しただけで、馬も人も大事には至らなかった。だが、春古馬三冠の懸かったキタサンブラックの騎乗が控えていた武豊騎手としても、冷や汗をかかされた一幕だっただろう。しかも、ヒシマサルは外枠発走となってしまい、微妙なところで歯車が狂い始めている。
だが転んでもただでは起きないのが、武豊騎手が「天才」と称される所以か。中団外目からスムーズな競馬をしたヒシマサルは、勝負所でじょじょにポジションを上げる。最後の直線で外に持ち出されると、しぶとく脚を伸ばして、最後は粘りこみを図った先頭を交わしてゴールに飛び込んだ。
「放馬」と「外枠発走」という不利がありながらも、相棒を勝たせた武豊騎手。ただ、”目先の勝利”よりも大きかったのが、この日の馬場の「傾向」が見えたことだ。開幕最終日に降雨も重なり、この上なく複雑な馬場状態になった中で、しっかりと馬が伸びる「勝利の道」いわば”ヴィクトリーロード”を発見できたことだった。
実際に武豊騎手は続く9レースでも、内を進んでいたダイアナヘイローを最後の直線であえて外目に持ち出して快勝。「ここさえ通れば伸びる」という確かな感触を掴んでいたはずだ。
武豊騎手にとっては、それらの”検証”を経て挑んだ宝塚記念だった。レース後に批判が集まったキタサンブラックの競馬ぶりは、実はまるで同舞台で行われたヒシマサルの競馬をなぞる様な進路を進んでいる。