キタサンブラック「攻略法」をサトノ軍団が示した!? 宝塚記念(G1)を勝った大物調教師が「一人二役」をこなしたM.デムーロ騎手の神騎乗を絶賛!
そして、それを見事に実践したのがサトノクラウンであり、鞍上のデムーロ騎手だったというわけだ。
サトノクラウンはペースが遅い、つまりは前を行くキタサンブラックのペースになっているとみるや、まず「ノブレス役」になってキタサンブラックを刺激。有馬記念のノブレスはそのまま先頭集団にプレッシャーを掛け続けて大敗したが、宝塚記念のサトノクラウンはスパートを開始した先頭集団についていかず、あえて自重。次の瞬間には「ダイヤモンド役」に転身して、ペースが上がった”利”を得たということだ。
競馬界屈指の慎重派で鳴らす堀調教師が珍しく「一番のポイント」と手放しでデムーロ騎手を絶賛したことには訳がある。結果的に「一人二役」となったこの騎乗が決して簡単なことではないからだ。
競走馬は基本的に一度急激な加速、つまりはゴーサインを出すと燃え尽きるまで全力で走り続ける性質がある。それを「まだ早い」という理由で止めようとしても、多くの馬はそれを理解できずに結果的に騎手とケンカをする。いわゆる折り合いを欠いた状況だ。
例えば、今年の天皇賞・春のシャケトラにはスタートで出遅れるというアクシデントがあった。鞍上の田辺裕信騎手は、その遅れを取り戻そうとスタート直後から加速。しかし、それをゴーサインと受け取ってしまったシャケトラは、出遅れたポジションを回復した後もずっと前に行きたがり、結果的にそれを止めようとした田辺騎手との折り合いを欠いて9着に惨敗している。
したがって、今回の宝塚記念でサトノクラウンに刺激されたキタサンブラックの武豊騎手、シュヴァルグランの福永祐一騎手、シャケトラのC.ルメール騎手といった面々はスパートするには「まだ早い」と重々理解していながらも、止めようとして馬とケンカをして余計な力を消耗させてしまうくらいなら、ベストではないが「このままゴールまで行かせた方がいい」という判断でスパートしたということが考えられる。