2024年は津村明秀「覚醒」の一年に!?「ジーッと見ちゃった」無難なジョッキーを「勝てる男」に“大変身”させた名牝との挫折
昨年キャリアハイ更新の津村明秀騎手が金杯制覇!
6日、中山競馬場で行われた中山金杯(G3)は、5番人気のリカンカブール(牡5歳、栗東・田中克典厩舎)が勝利。「1年の計を占う」とされるJRAの開幕重賞を制したのは、デビュー21年目を迎える津村明秀騎手だった。
「気持ちいいですね。はい」
2024年最初の重賞制覇に、そう素直な気持ちを吐露した津村騎手。日程の都合で、今年の東西金杯は6年ぶりに6日に行われることになったが、実は1月5日は津村騎手の誕生日。これには本人も「久しぶりに誕生日が金杯じゃなくなったんですけど、よかったです(笑)」と報道陣の笑いを誘った。
17頭立ての芝2000mのレース。この日から中山は仮柵が6mほど外側に移動したCコースが使用されていたが「今日の芝のレースを見ていても、時計が速くて前が止まらないレースが続いていたので、位置を取りに行くことだけをイメージしながら」との言葉通り、積極的に好位を取りに行くと、最後の直線では力強く抜け出した。
まさに鞍上の作戦通りの勝利だが「こちらの期待通り、先頭に立ってからもしっかり走れていたのでよかった」と相棒リカンカブールの走りを称えた津村騎手。昨年56勝を挙げ、20年目にしてキャリアハイを更新したベテランが、2024年開幕から大きなアピールに成功している。
「長く関東の中堅騎手というイメージだった津村騎手ですが、ここ数年で一皮むけた印象です。以前はどこか無難な騎乗が目立っていましたが、勝ちを意識したレースが明らかに増えている印象。この日の騎乗も見事でしたし、今年は大仕事をやってくれそうな予感がありますね」(競馬記者)
2018年が52勝で-10、19年が39勝で-21、20年が31勝で-28、21年が41勝で-17……これが何の数字かわかる人は相当な津村騎手のファンだと思うが、実は1着と2着の差だ。つまり2018年から21年までの津村騎手は1着よりも2着が圧倒的に多い「勝ち切れないジョッキー」だったのだ。
ところが22年が38勝でプラスマイナス0になると、昨年は56勝で-2と1、2着の差が急接近。前出の記者が「勝ちを意識したレースが明らかに増えている」と語るのは、数字にも表れている。この日も5番人気で2勝を挙げる好スタートを決めた津村騎手だが、一方で2、3着は0。そういった意味でも21年目のベテランにとって手応えのある1日だったに違いない。
「勝てる男」に“大変身”させた名牝との挫折
「津村騎手にとって大きかったのは、かつて主戦を務めたカレンブーケドールとの出会いだったそうです。オークス、秋華賞、そしてジャパンCと津村騎手とのコンビでG1・2着が3度もある馬ですが、通算成績は17戦でわずか2勝。いつもいい競馬をするけど、あと一歩が足りないといった、まるで当時の津村騎手を象徴するような成績でした」(同)
実際に、カレンブーケドールに騎乗していた2020年に『netkeiba.com』の人気対談企画『競馬対談 with佑』に登場した津村騎手は、同期でありホストの藤岡佑介騎手に当時の心境を吐露。完璧に乗りながらも3/4馬身差の2着に敗れた前年のジャパンCについて「オイシン(マーフィー騎手)のウイニングランをジーッと見ちゃったもん」と語っている。詳細はぜひ、本対談をご覧いただきたいが、本人にとっても期するものがある敗戦だったようだ。
「昨年キャリアハイ(勝数)を超えてたので、今年も昨年以上の結果を出したいなと思います」
中山金杯の勝利騎手インタビューで、そう力強く今年の抱負を語った津村騎手。昨年の56勝はまだ目立った成績ではないかもしれないが、関東リーディングでは6位。21年目にして進化を示す1年になりそうだ。