【共同通信杯】紛れもなく最高の出世レース。テンポイント、ナリタブライアン、ゴールドシップ、エルコンドルパサーらJRA史に残る勝ち馬21頭。名馬の道へ進むのはジャンタルマンタルかエコロヴァルツか
今週末に行われる共同通信杯(G3)は、日本ダービー(G1)と同じ東京コースで行われることもあり、クラシックへ向けた登竜門ともいうべき重要な一戦。今年で58回目を迎えるが、共同通信杯の名前がついたのが第17回から、それ以前は東京4歳ステークスの名称で行われていた。
若い競馬ファンはエフフォーリアやゴールドシップが勝利したレースをイメージするかもしれないが、過去を振り返ればそれらに勝るとも劣らない名馬がズラリといる。
しかも勝ち馬だけでなく2着以下に広げればさらに活躍馬の宝庫で、例えば過去10年の日本ダービー馬がタスティエーラ、シャフリヤール、ドゥラメンテの3頭、さらにジオグリフ、アドマイヤマーズ、サトノアラジンらが後にG1を制している。
今回は過去の優勝馬に厳選し、特に活躍した21頭を紹介しよう。
■1968年 タケシバオー
今や日本馬の海外遠征は日常茶飯事だが、その先駆者ともいえるのがタケシバオー。まだ右も左も分からない状態で、アメリカに2年連続で遠征。不運もあって結果を残すことができなかったが、国内で天皇賞・春(現G1)など27戦16勝2着10回3着1回と抜群の成績を残していることからも、その時代を代表するトップホースだったのは間違いない。後にJRA顕彰馬にも選出されている。
■1975年 カブラヤオー
皐月賞(G1)と日本ダービーの二冠を達成、屈腱炎を発症して菊花賞(G1)には出走できなかったが、狂気の逃げと呼ばれたレースは圧巻。日本ダービーは前半1000mを58秒6と当時からすると驚異的なハイラップで飛ばし、そのまま影を踏ませることなく勝利している。
■1976年 テンポイント
馬体の美しさから「流星の貴公子」と呼ばれた名馬。有馬記念(G1)でのトウショウボーイとの一騎打ちは今も語り継がれるほど。デビューから4戦4勝で共同通信杯を勝利。なお2着クライムカイザーは日本ダービーを制している。
■1978年 サクラショウリ
小島太元騎手とともに、昭和の競馬を盛り上げたサクラ軍団のダービー馬。重賞初勝利がこのレースで、その後日本ダービーだけでなく宝塚記念(G1)も勝利している。
■1983年 ミスターシービー
セントライト、シンザンに続き史上3頭目のクラシック三冠を達成した同馬も、初重賞制覇はこのレース。後に顕彰馬に選出されている。
■1985年 サクラユタカオー
名種牡馬テスコボーイの傑作。3連勝でこのレースを制し、クラシックの大本命と目されるも、レース後に骨折が判明。だが翌年秋の毎日王冠(G2)と天皇賞・秋(G1)をともにレコード勝ちの快挙。1800~2000mでは6戦6勝、3つのレコード勝ちと圧倒的な強さを見せた。
■1986年 ダイナガリバー
今や飛ぶ鳥を落とす勢いの社台グループだが、同馬が最初の日本ダービー馬である。有馬記念ではミホシンザン、ギャロップダイナ、スズパレード、メジロラモーヌ、サクラユタカオーらを相手に勝利している。
■1990年 アイネスフウジン
約20万人が集結した東京競馬場に響き渡ったナカノコールは、日本ダービー史に残る名場面といえよう。残念ながらレコード勝ちをおさめたダービーを最後に屈腱炎を発症して引退。共同通信杯での逃げ切りが、日本ダービーの勝利に繋がったといえる。
■1994年 ナリタブライアン
シャドーロールの怪物と呼ばれた史上5頭目のクラシック三冠馬。この共同通信杯がデビューから8戦目であったが、そのタフさは圧倒的なレコード勝ちからもわかる。引退後に史上24頭目の顕彰馬に選出される。
■1997年 メジロブライト
メジロマックイーンやメジロパーマーでおなじみ、メジロ軍団晩年の傑作。クラシックにはあと一歩及ばなかったが、古馬になって天皇賞・春(G1)を勝利している。
■1998年 エルコンドルパサー
共同通信杯は降雪の影響で芝からダートに変更となったが、ものともせず快勝。ただし外国産馬のためクラシック三冠には出走できず、NHKマイルC(G1)を目標に調整され、こちらも見事勝利。秋は毎日王冠でサイレンススズカの2着、そしてジャパンC(G1)を勝利。翌年は4戦すべてヨーロッパに遠征し、イスパーン賞(G1)2着、サンクルー大賞(G1)1着、フォワ賞(G2)1着、凱旋門賞(G1)2着の好成績を残した。2014年に史上30頭目の顕彰馬に選出されている。
■2000年 イーグルカフェ
この共同通信杯が重賞初勝利。その後にNHKマイルC、そしてジャパンCダート(G1、現チャンピオンズC)を制覇。二刀流として活躍した。
■2001年 ジャングルポケット
後に日本ダービーを制し、さらには3歳馬ながらテイエムオペラオーを豪快に差し切ってジャパンCを制した。日本ダービー前に共同通信杯を経験したことが、日本ダービーやジャパンCの勝利に繋がったといえるだろう。
■2006年 アドマイヤムーン
弥生賞(G2)終了時点で6戦5勝、重賞3勝と圧倒的なクラシック候補であったが、皐月賞と日本ダービーでは結果が出ず。その素質は翌年開花し、ドバイデューティーフリー(G1、現ドバイターフ)、宝塚記念、ジャパンCを制した。
■2012年 ゴールドシップ
未だに多くのファンがいる芦毛の名馬。共同通信杯では後のダービー馬ディープブリランテに勝利し、皐月賞は4番人気を覆しての勝利。その後も菊花賞、有馬記念、宝塚記念、天皇賞・春などG1レースを計6勝した。
■2014年 イスラボニータ
共同通信杯を勝利した後は皐月賞を制し、日本ダービーは2着。秋は天皇賞に挑戦し3着に好走。その後もマイルCS(G1)で2着に好走するなど幅広く活躍した。
■2015年 リアルスティール
福永祐一元騎手とのコンビで、後の二冠馬ドゥラメンテを破っての勝利。一躍注目を集めたが、皐月賞と日本ダービーは同馬に逆転を許す。だが明け4歳のドバイ遠征ではドバイターフ(G1)で見事G1初制覇。
■2016年 ディーマジェスティ
共同通信杯は6番人気と低評価での勝利。皐月賞も8番人気での勝利だったが、負かした相手はマカヒキやサトノダイヤモンド、エアスピネルやリオンディーズといった名馬ばかり。同馬がその素質を開花させたのは、紛れもなくこのレースだった。
■2017年 スワーヴリチャード
現在、種牡馬としてブレイク中のスワーヴリチャードも重賞初制覇がこの共同通信杯。古馬になって大阪杯(G1)、ジャパンC(G1)を制している。
■2019年 ダノンキングリー
G1を制したのは古馬になってからの安田記念(G1)のみだが、重賞4勝中3勝、日本ダービー2着など東京コースを大の得意としていた。
■2021年 エフフォーリア
鞍上の横山武史騎手が若手であったこともあり、2戦2勝ながら当時は4番人気とまだ無名の存在であった。その後は皐月賞1着、日本ダービー2着、そして3歳馬ながら天皇賞・秋1着、有馬記念1着。当時、この活躍を想像できたファンやマスコミはいただろうか。ちなみに3着シャフリヤールは日本ダービーを制している。
ミスターシービーとナリタブライアンという2頭の三冠馬を送り出し、勝ち馬だけでも6頭の日本ダービー馬が誕生しているレース。また古馬になってからもジャパンC、有馬記念、宝塚記念、天皇賞・秋、天皇賞・春、安田記念、ジャパンCダートなどを勝利した馬がズラリ。まさしく共同通信杯は3歳限定重賞でも群を抜く出世レースといえる。
今年出走する馬も、いずれは大仕事をやってのけるだろう。それはジャンタルマンタルかエコロヴァルツか、もしくは別の馬か。今からレースが待ち遠しい。