【共同通信杯】武豊「距離延長歓迎」もライバルに不安なし…エコロヴァルツは絶好追い切り、2歳チャンプ打倒のカギを握るのは「アドマイヤ」のアレ?
朝日杯フューチュリティS(G1)の借りを返す時が早くもやってきた。
昨年の2歳チャンプ決定戦を優勝したジャンタルマンタルと2着に敗れたエコロヴァルツによる2度目の直接対決が実現する共同通信杯(G3)。ライバルが出走する舞台にあえての参戦を決断したのは、陣営も前回の敗戦が力負けではなかったと証明したいという思いがあるだろう。
振り返れば朝日杯FSのジャンタルマンタルは、何もかもが完璧なレース運び。デビューから2戦で結果を残していた鮫島克駿騎手には同情したくなるが、手綱を引き継いだ川田将雅騎手も前任者と同じく文句なしの好騎乗でパートナーを勝利に導いた。
ただ、完璧超人かとツッコミを入れたくなる人馬に対し、敗れたエコロヴァルツが不完全燃焼に終わっていたことも覚えておきたい。
17頭立てで行われた芝1600mのレース。最内1枠1番からまずまずのスタートを決めたエコロヴァルツだが、道中で隣枠のミルテンベルクにぶつけられたため、ズルズルと後退する不利を受けたことが響いた。
完璧過ぎたジャンタルマンタルと不完全燃焼のエコロヴァルツ
しかし、そこは百戦錬磨のレジェンド武豊騎手である。後方待機策に作戦を切り替え、最終コーナーで最後方から直線だけ大外に持ち出す末脚勝負を敢行。上がり最速となる3F34秒1の末脚を炸裂させ、ジャンタルマンタルの1馬身1/4差まで迫ってゴールした。
「勝ち馬に騎乗していた川田騎手が、性格の穏やかさやセンスの良さを評価していたように、ジャンタルマンタルは操縦性に優れた馬という印象が残りました。優等生的なレース運びで勝利したため、逆に強さが見えにくかったかもしれませんが、不利なく競馬が出来るのは強いからこそ。そういう意味でもエコロヴァルツとの再戦は面白そうです。
そういった意味では、エコロヴァルツもセンスのある馬です。大味な競馬になった朝日杯FSは、内枠からのスタートで不利を受けてしまい、他に選択肢がなかった結果。デビューから連勝を決めた2戦は積極策からの押し切り勝ちでした。今回は力と力の勝負になりやすい直線の長い東京コースが舞台。武豊騎手もライバル打倒に向けて秘策を練っているでしょう」(競馬記者)
ちなみに武豊騎手は、自身の公式ホームページにて、「強敵はいますが、距離延長はこちらの利かなと、前向きに考えています。ご期待ください」と悪くない感触を伝えている。
対するジャンタルマンタルも父Palace Maliceは弟に昨年の天皇賞・春(G1)を制したジャスティンパレス、ステイヤーズS(G2)を制したアイアンバローズといったステイヤーの血が入る種牡馬。こちらも距離延長に不安のない血統といえる。武豊騎手のニュアンスとしては、相手よりもエコロヴァルツの競馬がしやすくなるという意味合いかもしれない。
また、2頭との直接的な関係はないものの、過去の共同通信杯で朝日杯を優勝した馬の勝利が1994年のナリタブライアンを最後に出現していない点は、エコロヴァルツにとって追い風となる傾向だ。
その間に2頭の朝日杯優勝馬が出走して2着が2度あったのだが、1頭は2006年のフサイチリシャール(1着アドマイヤムーン)、もう1頭は19年のアドマイヤマーズ(1着ダノンキングリー)である。
勘のいい読者はお気づきだろうが、勝った馬も負けた馬もアドマイヤ冠名のつく馬。レジェンドと因縁のある名物オーナーの所有馬。敗れたアドマイヤマーズに騎乗していたのはM.デムーロ騎手で、勝利したアドマイヤムーンに騎乗していたのは武豊騎手だった。
当時は先に抜け出しを図った2歳チャンプを徹底マークしての差し切り勝ち。相棒のエコロヴァルツも7日の追い切りで、栗東の坂路を4F54秒7-12秒4(馬なり)と絶好の気配。今年のレジェンドが、どのような手綱捌きを見せてくれるのかにも注目したい。