羽田盃(G1)8頭立てに中央競馬と地方競馬の「温度差」浮彫り…3歳No.1フォーエバーヤング不在でも「敵前逃亡」続々、ダート革命に早くも失速の危機
ダート三冠の開幕戦・羽田盃(G1)は8頭立て…
2024年の競馬の目玉の1つ、新設されたダート三冠の開幕戦・羽田盃(G1)が、いよいよ24日大井競馬場で行われる。
長く日本競馬の主流は芝だったが、今春ウシュバテソーロがイクイノックスを上回り歴代賞金王に立つなど、近年はダートも世界トップレベルに到達。今では芝のレースに迫る盛況ぶりを見せている。
そんな中、今年から誕生したのがダート三冠路線だ。羽田盃→東京ダービー→ジャパンダートクラシックへと続く従来の南関東三冠路線にJRA所属馬が合流。その記念すべき開幕戦となる羽田盃には、芝の桜花賞(G1)や皐月賞(G1)に負けない盛り上がりが期待されていた。
ところが、いざ発表された出走馬はわずか8頭……。少数精鋭と言えば聞こえは良いかもしれないが、フルゲート16頭の半数というのは、いかにも寂しい状況と言わざるを得ない。
中央競馬と地方競馬の「温度差」
「今年の競馬の目玉として大きな盛り上がりが期待されたダート三冠ですが、厳しい船出となりました。
JRA勢は既定の4頭が出走し、そのすべてが優先出走権を獲得している馬と狭き門になりました。ですが逆に12頭の出走が認められている地方所属馬の回避が続出。京浜盃(G2)でJRA勢に7馬身差で圧勝した地元の雄サントノーレや、デビュー5連勝のダテノショウグンらが故障の影響により出走できない事情はありますが、それでもここまで揃わないとは……。
南関東三冠路線の中央(JRA)解放は、中央の競馬ファンとしては楽しみが増えた形になりますが、一方で一部のファンからは地元の馬の活躍の場が奪われるなど反対の声もありました。
ちなみに8頭立ては、レース創設の1956年以降でも1973年に並ぶ最少タイ(前身の大井盃含む)。主催者側も賞金増額を始め、3歳競走地方所属馬付加賞金を新設するなど出走を促す手は打ったのですが、まるでシカトのような状況になってしまいました」(競馬記者)
記者が話す通り、1981年以降で羽田盃の出走馬が10頭を下回ったことは一度もない。昨年もデビュー3戦3勝のミックファイア(後の三冠馬)が出走していたが、16頭立てのフルゲートと変わらぬ賑わいを見せていた。
「こうなってくると、その意義を疑問視されるのがJRAと地方所属馬のそれぞれ上位3頭に与えられる東京ダービーの優先出走権ですね。(JRA勢は5着以内が条件)
仮にJRA勢が上位4着までを独占した場合、4着だった馬には優先出走権が付与されません。これは仕方ないにしても5着~7着の地方所属馬にも優先出走権が付与された場合、8頭立ての7着は、もうブービー……。もちろんルールなので誰が悪いというわけではないのですが、主催者側としては想定外の状況と言わざるを得ないでしょう」(同)
JRA枠の拡大を訴える声も
ちなみに今年から東京ダービーの前哨戦となった27日のユニコーンS(G3)には、現段階でフルゲートを超える17頭の登録が想定されている。
そういった背景もあって、ネット上のSNSなどでは、早くも来年以降のJRA枠の拡大が叫ばれている状況だ。一理ある意見だが、逆にその結果ますます地方所属馬の敬遠に繋がってしまう可能性もあり、それは当然JRAとNARにとって本意ではないはずだ。
「芝とダートを両輪とする日本競馬の発展を目指し、地方競馬が主体となってダート競走の体系整備を行うことといたしました」
一昨年の11月、JRAとNARが手を取り合うことによって産声を上げたダート革命。その目玉となるはずだったダート三冠だが、今回で垣間見えた地方関係者と中央関係者の温度差だけでなく、サウジアラビアやUAE、そして日本の3歳ダートNo.1ホースであるフォーエバーヤングが出走する米国のクラシックなど、トップホースの海外流出の歯止めにもなっていないなど課題は山積みだ。
いよいよ開幕を迎えるダート三冠だが、早くも窮地に立たされている。