イクイノックスの母が制した9年前のマーメイドS! 勝利に導いた鞍上は藤岡康太…2着馬は宝塚記念で最強馬相手に大金星

1年前の宝塚記念はイクイノックスが貫録勝ち 撮影:Ruriko.I

 今年はいつもの阪神ではなく京都競馬場で開催されるマーメイドS(G3)。翌週に宝塚記念(G1)を控える中休み的な時期の開催ということもあり、ファンの注目はそれほど大きくないかもしれない。

 しかし、この荒れることで有名な牝馬限定のハンデ重賞を勝った馬から、後の世界最強馬が生まれることを予想したファンは多くなかっただろう。

宝塚記念と縁のある名牝2頭が出走していたマーメイドS

 それは今を遡ること9年前、このマーメイドSを優勝したシャトーブランシュのことである。父キングヘイロー、母父トニービンという玄人好みする渋い血統ではあるが、キタサンブラックを配合された本馬は、イクイノックスという競馬史に残るスーパーホースを世に送り出した。

 シャトーブランシュは当時、前走のパールS(3勝クラス、芝1800m)を5番人気で4着に敗れていたようにまだ一介の条件馬に過ぎなかった。

マーメイドSには前走で完敗を喫した相手の6番人気ウインプリメーラ、福島牝馬S(G3)で2着の2番人気リラヴァティ、オークス(G1)4着馬の3番人気アースライズなど、一筋縄ではいかないメンバーが集まっていた。

 中でも最も注目されたのは蛯名正義騎手(現調教師)とのコンビで1番人気に支持されていたマリアライトだ。母は、いわゆる“ハズレ馬”を出さないことで定評のあるクリソプレーズ。後にダートG1を4勝したクリソベリルの母としてもスポットライトを浴びることとなる。

そういった状況下も関係してか、シャトーブランシュは16頭立てのレースで8番人気の低評価。相手関係を見渡してみても分が悪かったことは否めない。

 だが、この日のシャトーブランシュは好位から伸びを欠いたパールSと何もかもが違った。

 芝2000mを舞台に争われた一戦。大方の予想通り、ハナに立ってレースを先導したのはリラヴァティ。これをマークする格好でウインプリメーラが2番手につけ、マリアライトは10番手の後方待機策を採った。対するシャトーブランシュは、前走とは異なる終いに懸ける競馬を選択していた。

 前後半1000m通過が61秒5-59秒0だったように、ペースは逃げ先行馬に有利な展開となるはずだった。

 しかし、勝利を意識したマリアライトがワンテンポ早く動いたこともあり、最後の直線で5番手まで進出。これをマークした各馬も後を追う格好で残り800mからラップがロングスパート戦へと変わる。

藤岡康太騎手が下した大胆な作戦変更

 各馬の出入りが激しくなった中、外から抜け出しを図ったマリアライト。ゴール前でようやく抜け出したところを外から一気に交わし去ったのが、上がり最速33秒6の豪脚を使ったシャトーブランシュだった。まさに並ぶ間もなく一瞬という感じで、マリアライトの鞍上蛯名騎手も大外から忍び寄る刺客に驚きを隠せなかったのか、チラ見をして確認するシーンもあった。

「枠がよかったので内をロスなく回って、終いに懸けようと思っていました。賞金も加算できましたし、これからもっと大きな舞台でがんばってくれると思います」

 会心の大外一気を決めた藤岡康太騎手は、レース後にパートナーの激走をそう振り返ったものの、残念ながら波乱を起こしたマーメイドSがシャトーブランシュにとって現役最後の勝利でもあった。

 そして2着に惜敗したマリアライトの蛯名騎手は、「人気になっていますから、マークされるのは仕方ありませんし、今日は安全策で外を回って、よくがんばっています」と肩を落としたが、人馬は翌年の同時期に行われた宝塚記念を8番人気で優勝。後方待機から早めに抜け出して、当時の現役最強馬ドゥラメンテとキタサンブラック相手に大金星を挙げている。

 G1でもない牝馬限定のハンデG3に、宝塚記念を勝つ世界最強馬の母や宝塚記念で現役最強馬を破る快挙を成し遂げる2頭が潜んでいたことは、当時誰にも予想できなかったのはないか。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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