川田将雅、武豊も「翻弄」された札幌記念の怪…「個性派ジョッキー」岩田康誠のマジックが炸裂!
秋のG1を見据える大物が参戦することも珍しくなく、毎年のように「G1昇格」を望む声が出ている札幌記念(G2)。夏競馬で最も注目を集める一戦を制したのは、岩田康誠騎手が騎乗した5番人気ノースブリッジ(牡6、美浦・奥村武厩舎)だった。
鞍上の岩田康騎手は今年3勝目の重賞制覇。2着に横山武史騎手のジオグリフ、3着に横山典弘騎手のステラヴェローチェが入り、5→3→4番人気で決着した3連単の払戻しは8万3130円の好配当となった。
5番人気の伏兵が勝利した一方で、単勝1.3倍の大本命プログノーシスと川将雅騎手のコンビは4着、2番人気に推されたシャフリヤールと武豊騎手のコンビも5着と精彩を欠く結果。連覇を狙ったプログノーシスの敗戦により、1番人気馬の連敗は2011年トーセンジョーダンの優勝を最後に13まで伸びてしまった。
1997年にG2へと昇格した札幌記念だが、30年近い歴史で連覇を達成したのは稀代の女傑エアグルーヴただ1頭。1番人気馬にとって鬼門というべきジンクスは、来年もまた注目を集めるだろう。
札幌記念の1番人気馬は13連敗
とはいえ、勝ち馬のノースブリッジも単なるフロックという訳ではない。大外の8枠12番から岩田康騎手が積極的に位置を取りにいく好判断。逃げると目されていたアウスヴァールを先に行かせて自身は少し離れた2番手をキープした。
そして、逃げた馬がマイペースに持ち込んだこともあり、1000m通過のラップも60秒5とやや遅め。そこからさらに後ろにいたノースブリッジ以降の馬たちにとっては超スローに近く、岩田康騎手も「してやったり」とほくそ笑んだかもしれない。
「4コーナー手前で岩田康騎手が後ろをチラ見して確認するシーンもありました。スローペースで流れていることは本人も把握していたでしょうし、後続馬の手応えや距離を確認した結果、早めの追い出しで問題ないと判断したのだと思います。最後の直線でもアウスヴァールを交わして内へ切れ込みラチ沿いを選ぶクレバーな騎乗。スタートからゴールまで経済的なコースをロスなく走らせていましたね。
ここぞというときの集中力や勝負勘は相変わらずさすがです。モズゴールドバレルに騎乗していた池添謙一騎手も『岩田さんにペースコントロールされた』と話していたほど。レース内容もホウオウビスケッツで制した函館記念(G3)の再現VTRのよう。あのときも逃げたのがアウスヴァールで、岩田康騎手が騎乗していたのも奥村武厩舎の管理馬でしたね」(競馬記者)
これに対し、4着に敗れたプログノーシスや5着のシャフリヤールは「岩田マジック」の被害に遭ったといえそうな敗戦。先述したように札幌記念の前半1000mは60秒5、後半が59秒1だったようにスローペース。実質、前にいた馬がそのまま粘り込んだ展開だっただけに、後方待機の馬たちにとって末脚が生かせない展開だったといえよう。
昨年の同レースを4馬身差で楽勝したプログノーシスだが、このときは稍重で前後半の1000mも60秒4-61秒1と逃げ先行勢に厳しい流れ。今年とは正反対のレースだった訳で、最後方にいたプログノーシスや道中で下げたシャフリヤールは、本来の実力を発揮できないままレースを終えたといえる。
また、ノースブリッジを管理する奥村武調教師の岩田康騎手に対する信頼も厚い。以前から岩田康騎手の手腕を高く評価しており、「めちゃくちゃ馬乗りは上手ですし、本当に馬の事をよく考えています。何で他の人が依頼しないのか分からないですが、僕的には彼が空いているのは凄くありがたいです(笑)」と話しているらしい。
追い切りや馬の作り方などもとことんやり、騎乗馬を良くも悪くも「自分色に染める」ジョッキーのため、こちらについては福永祐一調教師も「岩田くんが乗ると岩田仕様になるので、他の人が乗った時に走らせられなくなったり、全く走らなくなる可能性がある」と評したこともあるようだ。
リーディング争いをしていた頃は人を寄せ付けないような時期もあったが、根は真面目で凄く穏やかな人物。最近はレース後でもマスコミやクラブ関係者に普通にコメントしており、関係者からの評判も上々だ。
以前に比して騎乗馬の質こそ下がったものの、ポジション取りの巧みさ、インの経済コースをロスなく乗る技術は健在。馬券を買うファンが納得のいく競馬をしてくれる姿は息子の望来騎手より一枚も二枚も上だろう。50歳だがまだまだ現役トップクラスの腕前だ。この調子で秋の大舞台でも大暴れしてくれることを期待したい。