日本競馬は心の故郷 〜ネクラ女医の競馬日記No.35(最終回)〜

ネクラ女医の競馬日記

 各国の競馬のあり方って、本当に千差万別ですよね。

 古き良き貴族文化の香りを残すイギリス競馬、同じ西欧のフランス競馬はもっと開放的で庶民的な雰囲気、ダートが主戦場のアメリカ競馬はもっとタフで荒々しい……各国の競馬を観ていると、そこに生きる人々の息遣いを感じるような瞬間が多々あります。

ネクラ女医の競馬日記No.35

 どれも独自の魅力がありますが、様々な国々の競馬場を見てきた今も、やっぱり日本競馬は私にとって特別な存在です。

 例えば、この時期は新潟や札幌のレース中継を観るのですが、そうすると夏休みに素麺を食べながらラジオで競馬実況を聴いていた日を思い出すことがあります。麺つゆに入っていた茗荷(みょうが)の味、傍で揺れていた風鈴の音――。

 そういった日本の夏の何気ない情景まで伴って、鮮やかに記憶が蘇ることがある。観ていてこんなに懐かしい気持ちになるのは、私にとってはやっぱり日本競馬だけなんですよね。各国の競馬ファンも、もしかすると自国の競馬に同じようなノスタルジーを感じるのかもしれません。

 日本を含め世界の公認競馬の多くは、軍馬の育成を目的に発達した経緯があります。つまり、サラブレッドはかつて戦争の道具であって、競馬はいかに性能の良い兵器を生み出すかの試験場だった側面があるわけです。

 それが今、ひとつの立派なスポーツとして、各国の国民性や伝統を汲みながら色とりどりに花開いている。時には、私たちが故郷を思い出す呼水にまでなってくれることがある……そう思うと、競馬という文化を、より愛おしく感じませんか?

 そんな愛すべき文化が、今後もより豊かに、末長く発展していくことを、心より願います。

さかた

英国在住の競馬好きアラサー女医。学生時代はWINS場内スタッフのアルバイトをしながら、ウオダス世代の火花散るレースに脳を焼かれた。好きな競馬場メシは「梅屋」のモツ煮込み。鉄火場であおるビールは人生の道標。

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