浜中俊「ハナにこだわっていた訳ではない」メイショウタバルが圧逃!菊花賞の課題は鞍上の成長?

メイショウタバルと浜中騎手 撮影:Ruriko.I

 22日、中京競馬場で行われた神戸新聞杯(G2)は、ハナを奪った2番人気メイショウタバル(牡3、栗東・石橋守厩舎)が鮮やかな逃げ切り勝ちを決めた。

 半馬身差の2着に3番人気ジューンテイク、3着に4番人気ショウナンラプンタが入り、川田将雅騎手とのコンビで1番人気支持されたメリオーレムは、直線で伸びを欠いて5着に敗れた。勝ちタイムは2分11秒8(稍重)。

 真価を問われた菊花賞(G1)のトライアルで、メイショウタバルと浜中俊騎手のコンビが、不完全燃焼に終わった春の鬱憤を晴らした。

 春は重馬場の毎日杯(G3)を1分46秒0の好時計で制し、シンザン記念(G3)を勝ったノーブルロジャーを6馬身千切り捨てた。皐月賞(G1)で4番人気に推されたものの、前半から折り合いがつかず暴走して最下位の17着に大敗。巻き返しを誓った日本ダービー(G1)は、直前に左後挫石で出走取消という不本意な結末が待っていた。

菊花賞制覇に大前進した圧逃劇

 高い素質を持ちながら前進気勢の強さがネックとなり、本領発揮には心身のさらなる成長を求められたが、再起を期した神戸新聞杯で百点満点の一発回答を出した。

 右後肢フレグモーネを発症したサブマリーナが出走を取り消し、14頭立てで争われた芝2200m戦。逃げ馬にとって決して有利とはいえない8枠15番に入ったメイショウタバルだったが、大外からジワジワと進出する。スタートから押して押して先頭に立つ競馬ではなく、あくまで他が行かないなら行くだけという選択だろう。

 道中でラップを緩めることなく、2番手以降の馬に5~6馬身差をキープしたまま、最後の直線に入っても脚色は衰えず、2番手のジューンテイクが差を詰めただけ。着差こそ半馬身だが、完勝といえる内容だった。

 手綱を取った浜中俊騎手も「ハナにこだわっていた訳ではなかった」と振り返ったように、道中もあくまで馬の気分とリズムを優先する“マイペース”の一人旅。何もしないことが結果に結びついた訳だが、これは本馬が精神的に成長した証といえるのではないか。

「稍重の発表でしたが、この日の中京は33秒台の上がりも出ていましたし、印象ほど馬場は悪くなかったと思います。それは勝ちタイムの2分11秒8が、良馬場の中山で行われたオールカマー(G2)と同じだったことでも明白です。父ゴールドシップで3代父にダンスインザダークと菊花賞に縁のある血統でスタミナの裏付けもあります。

特筆すべきは、メイショウタバルの上がりが36秒0だった点ですね。発表されたラップを確認してみましたが、道中でラップの緩んだ区間がなく、最初から最後まで12秒前後が続いていたのです。ラスト1Fも12秒5と止まっていた訳でもありません。ただの前残りではないことが伝わりますね」(競馬記者)

 確かに加速のつかない最初の1Fこそ12秒7だが、2F目以降で最も遅かったのがゴール前の12秒5。一貫して速いラップを刻んでいたことが分かる。だからこそ36秒0の上がりだった訳だが、スタミナのない馬にこんな芸当は到底できない。

 とはいえ、やはり課題となるのは道中のラップに“遊びがない”ことである。

 2200m程度なら押し切れても、これが3000mの長丁場になると、道中で息を入れなければ最後までスタミナが持たない。近3年の菊花賞で逃げ先行馬が3連勝中だが、1000mを3分割すると速→遅→速の緩急をつけて勝利しているのだ。

 横山武史騎手(21年タイトルホルダー)、田辺裕信騎手(22年アスクビクターモア)、C.ルメール騎手(23年ドゥレッツァ)は、さすがといえるペース配分で勝利を掴んだ。本番はトライアル以上に騎手の手腕を問われる長丁場。メイショウタバルだけではなく浜中騎手の成長も求められることになりそうだ。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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