西村淳也の「覚悟」が導いた殊勲星!早逝惜しまれるドゥラメンテもスピードとスタミナ証明

西村淳也騎手 撮影:Ruriko.I

 先週末は秋のG1シリーズ開幕を告げるスプリンターズS(G1)が開催。快速自慢の16頭が集結した一戦を制したのは、道中3番手から抜け出しを決めたルガルと西村淳也騎手のコンビ。1番人気に推された春の高松宮記念(G1)は、骨折で10着に大敗したが、それ以来となるぶっつけ本番で悲願の初G1制覇を成し遂げた。

 また、ルガルだけではなく主戦の西村騎手もG1初優勝だった。レース後の勝利騎手インタビューでも「本当に騎手生活を続けてきてよかった」「競馬のことは何も覚えていない」「関係者の皆さんに感謝でいっぱい」と感無量。元々乗れる若手として評価の高かった騎手だが、ついにG1ジョッキーの仲間入りを果たした。

 今年のG1初勝利は菱田裕二騎手(天皇賞・春=テーオーロイヤル)、津村明秀騎手(ヴィクトリアマイル=テンハッピーローズ)、菅原明良騎手(宝塚記念=ブローザホーン)に続く4人目。今年は例年以上に初G1ジョッキーが誕生しており、秋華賞以降のG1でも「初勝利」のかかる騎手がトレンドになるかもしれない。

上位入線した馬で明暗を分けたのは?

 開幕初日に条件クラスで1分6秒8が飛び出した秋の中山だったが、週中の雨で時計を要する馬場に替わった関係で勝ちタイムは1分7秒0(良馬場)。2012年のスプリンターズSでロードカナロアがマークした1分6秒7の更新はなかったものの、先週の馬場状態ならとてつもない高速決着となった可能性もあった。

 実際、横山典弘騎手とピューロマジックが前半3ハロンを32秒1で爆走し、強気に3番手を追走したルガルが栄冠を勝ち取った。掲示板に載った2~5着の全馬が上がり3ハロンで33秒台をマークしていたことを考えれば、ハイペースに怯まなかった西村騎手のポジション取りの勝利といえる。

「掲示板に載った各馬の前後半3ハロンを確認しましたが、勝ち馬こそ32秒8-34秒2で他の4頭はほぼイーブンラップ。逃げたピューロマジックと2番手のウイングレイテストは飛ばしていますが、3番手のルガルは少し前傾ながら絶妙なペース配分。結果論ではありますけど、覚悟の差が着順に現れた気がします。

前があれだけ飛ばすと慎重にならざるを得なかった騎手も多かったでしょうし、着差を考えれば勝てる位置から一列後ろになってしまったかもしれませんね。騎手次第で着順が入れ替わった可能性は十分にあったはずです。中でも特に勿体なかったのはナムラクレア。浜中俊騎手が騎乗した高松宮記念と同じような負け方をしてしまった印象です」(競馬記者)

 勿論、これで負けたら仕方がないというくらいに腹を決めた西村騎手の判断が最高の結果を呼び寄せた訳だが、電撃の6ハロンという名に相応しいレースだったことも確か。前半から飛ばして後半も速い脚を使えた馬が好走しており、想像以上の激流について行けない馬、後ろからの競馬しかできない不器用なタイプには厳しい展開だった。

 そして、フレッシュな人馬の勝利とともにドゥラメンテの計り知れない可能性も証明したレースでもある。

 ルガルの勝利でドゥラメンテ産駒のG1は13勝目。タイトルホルダーの菊花賞から始まって牝馬二冠スターズオンアース、牝馬三冠リバティアイランド、ホープフルSのドゥラエレーデ、NHKマイルのシャンパンカラー、菊花賞のドゥレッツァとバラエティ豊かな面々が揃っている。

 スプリンターズSから天皇賞・春と芝1200~芝3200mと距離に関しても不問。奇しくも自身が現役時代に制した皐月賞とダービーは未勝利だが、この勢いなら勝利は時間の問題だったはずだ。

 残念ながらドゥラメンテは、9歳の若さで2021年8月末に死亡。もし無事なら長期政権を築いていたと思える大活躍だけに惜しまれる。日本の競馬界においても大きな損失となっただろう。

GJ 編集部

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