何故リカビトスは秋華賞トライアルを使わなかったのか?「遅れてきた大物」が本番を勝つための「長期的戦略」の全貌
しかし、それでも陣営があえてこの関西の名手を指名したことには、明確な理由があった。
それは秋華賞が「京都の内回りコース」という独特の舞台で開催されることに起因するが、2014年のショウナンパンドラと、15年のミッキークイーンで、このトリッキーなコースのG1を制したのが浜中騎手だったからだ。
「京都の2000mのこの秋華賞で、後ろから行って差し切るような内容で勝っているジョッキーですから、よくわかっていると思います」会見で語った奥村調教師の言葉が、陣営の狙いと期待を集約していた。
ただ、その腕を見込まれて異例の抜擢を受けた浜中騎手だが、常識的に考えれば「2度あることは3度ある」と、そう甘い世界ではないだろう。実際にショウナンパンドラもミッキークイーンも、後の実績を考えれば「浜中騎手でなくとも勝てた」という考え方もできなくはないからだ。
しかし、実はこの浜中騎手がJRAきっての”偏食男”だということは、あまり知られていない事実だ。
2007年にデビューした浜中騎手が、初めて重賞を勝ったのが翌年の2008年。そこから約10年間で、すでに40の重賞勝利を上げている。ただ、その中でも4勝を誇る小倉2歳S(G3)とシンザン記念(G3)は、ある意味「異様な偏り」だ。各々が全体の10%をシェアし、2008年以降の10年間で1人の騎手が4勝を上げるのは、単純な相性以上に、そのレースを勝つ”コツ”のようなものの存在を感じる。
しかも、例えば同一重賞勝利の最多記録となる武豊騎手の京都大賞典(G2)に代表されるように、強力なお手馬で毎年挑戦できる古馬重賞ならともかく、シンザン記念や小倉2歳Sは世代限定レース。馬は毎年異なるが、それでも勝ってきたのが”偏食男”たる所以だ。