皐月賞馬アルアイン「菊花賞仕様」に思う”最強”調教師は、馬を「変える」池江泰寿か「変えない」藤沢和雄か……東西トップトレーナー「超一流の流儀」
幸い、日本競馬は芝の直線1000mから3600mに加え、ダートレースや障害レースなどバリエーションの豊富さは世界有数だ。したがって師の「変えない」スタイルはある意味、日本の競馬に適合しているといえるだろう。
「馬の適性に合わせたレースを使う」。一見、どの調教師も当たり前のように行っていることのように思える。しかし、藤沢調教師のスタイルへのこだわりは、もはや「信念」の領域に達していると述べても過言ではない。何よりも、それで結果を残している以上、師の「馬の適性を見抜く力」は、歴代の調教師の中でも突出しているのではないだろうか。
今でこそ、秋の天皇賞に3歳馬が出走することは当たり前になりつつあるが、1996年にその扉を開き、3歳馬として初優勝を飾ったのが、藤沢厩舎の管理馬バブルガムフェローだった。師はその後もシンボリクリスエスを送り込み、再び天皇賞・秋を制覇。両頭とも3000mの菊花賞を嫌っての、つまりは「馬の適性」に合わせての古馬挑戦だった。
ちなみに3歳馬で天皇賞・秋を勝ったことがある調教師は、未だ藤沢和雄だけである。
その強いこだわりは、今年も如実に現れている。「2400mがベスト」と評するダービー馬レイデオロが、菊花賞を回避してジャパンC(G1)へ向かい、「広いコースが向いている」と評したソウルスターリングに至っては、京都内回りコースの秋華賞(G1)を嫌って、広い東京で行われる天皇賞・秋(G1)に向かう予定だ。一見型破りな選択だが、適性を見抜く自信がなければできない選択といえるだろう。
自らの信念に則り、これだけ個性的な使い方をしながらも現役最多のJRA通算1367勝(10月16日現在)を誇る藤沢調教師。他に現役で1000勝を超えている調教師はおらず、まさに武豊騎手と並んで”現役レジェンド”といえる存在だ。
「2400mでも少し長いかもしれないくらいで、ベストは2000m前後」