JRAの「強行開催」に複数の騎手が怒り。「命にかかわる大問題」を”二の次”にした売上至上主義の闇とは
ましてや問題視された日は、菊花賞と天皇賞・秋という150億以上の大きな売上が見込めるビッグレース。途中で開催を中止した場合は出馬投票自体をやり直すことになりますし、そうなれば売上のダメージは確実です。JRAからすれば、是が非でも避けたいのは当然ですよ。
あとはインターネット投票の普及が大きいですね。確かに2日とも外に出ることさえ大変な状況でしたが、今は競馬場に行かずとも馬券が買える時代。菊花賞こそ昨年よりも売り上げを落としましたが、天皇賞・秋は東京競馬場の入場者数が前年比70.1%だったにもかかわらず、昨年よりも売上が上がりました。
つまり、台風で競馬場にお客さんが来られなくても馬券売上に大きなダメージがない以上、平日に順延するのは売上的なリスクばかりが先行するということ。なら、少々危険でも開催優先って考えますよね」(同)
キセキが豪快に差し切った菊花賞も、キタサンブラックが復活した天皇賞・秋も「死闘」と呼ぶに相応しい見応えのあるレースであり、観戦したファンの評価は非常に高い。中には「たまに、こういう馬場で競馬をやるのもいいね」と率直な感想さえ出てくるほど、”外”から見ている人間には危険性がわからない。
しかし、吉田隼騎手が語ったように”中”の人間からすれば、命の危険さえ感じる異常な状況だったようだ。繰り返しになるが、大きな事故に繋がらなかったのは幸いであり、各騎手がいつも以上に慎重な騎乗を心掛けた結果だろう。
果たして、本当に競馬は開催されるべきだったのだろうか。JRAはしっかり”中”から競馬を見ているのだろうか。疑問は募るばかりだ。
(文=浅井宗次郎)