【G1回顧・日本ダービー】 「世紀の一戦」に相応しい濃密なレースを制したのはマカヒキ。究極の「5強」が示した競馬の未来
2頭の火の出るような叩き合い。外を回ったディーマジェスティもジリジリと脚を伸ばすが2頭との距離をなかなか詰められない。今度はスピードの持続力に勝るサトノダイヤモンドが、マカヒキとの差を少しずつ詰めていく。粘るマカヒキと追うサトノダイヤモンド。ゴールの瞬間、わずかにハナ、マカヒキが残していた。
川田将雅騎手はダービー初勝利。直線での進路が狭い場面を「手ごたえもあったし、マカヒキなら大丈夫だと信じて乗った」とコメント。鞍上と馬の信頼が噛み合い、新たなダービー馬とダービー騎手が誕生したということだ。マカヒキがこの世代でダービー馬となった価値は非常に大きく、今後はすでに登録している凱旋門賞への挑戦も当然期待されるところだろう。
サトノダイヤモンドは、世代トップクラスの実力は見せたものの、僅かに栄光には届かなかった。C.ルメール騎手のレースぶりは見事だったが、最後の直線でわずかに外にヨレてしまったのが、結果的に同馬のスピードを削ぐ結果につながったように思える。極限の争いにおけるわずかな「ほころび」が勝敗を分けた。だが、十分にG1ホースに足る実力はある。
3着には皐月賞馬のディーマジェスティ。敗れた2頭以外は完全に突き放すことはできたものの、直線で「外」を回ってしまったコースロスが、結果的に大きく響いてしまった印象だ。レースの上り3ハロン34.2という瞬発力勝負となったが、同馬の上りは勝ったマカヒキと同じ33.3。位置取りが明暗を分けた部分もあるのだろう。ディーマジェスティもまた凱旋門賞への挑戦が期待される一頭。今後の成長にますます期待したい。
エアスピネルは、これまでと同様、まったく「欠点」のないレースをしたが、またしても同じ相手の4着。武豊騎手の騎乗も完璧なだけに、またも差を見せつけられてしまった。これだけ完成されたレースをできる馬が連続で馬券圏に入れないという事実が、この世代のレベルを如実に表している。
リオンディーズもメンバー中上り最速の33.2を駆使して後方から追い込むも、もはや時すでに遅し。能力は勝ち馬に劣らない圧倒的なものがあるが、気性やレース前に体力を消耗してしまう点など、見逃せない課題があるうちはこの世代のトップにはなれないということだろう。秋までにその改善がなされるか注目である。
マカヒキ勝利はもちろんだが、皐月賞上位5頭が日本ダービーでも上位を独占した点はやはり「最強世代」の中核を担う素質馬の実力をまざまざと見せつけた格好だ。今年のダービーは紛れもなく「世紀の一戦」にふさわしい濃密なものとなった。秋、そして未来へとつながる最高のレースだったといえるだろう。