【徹底考察】安田記念(G1) サトノアラジン「極上の上がり3ハロン『32.4秒』。しかし、G1級の切れ味には『理由』が存在する」
『考察』
昨年の5月にOPを勝ってから勝ちきれない日々が続いたが、前走の京王杯SC(G2)で念願の重賞勝利を飾ったサトノアラジン。賞金を上積みできたことで、使いたいレースに使えるようになったのは、この馬にとって重賞タイトル以上に大きなことだろう。
それにしても、前走はまさに「覚醒」を感じさせる圧巻の内容だった。
1000mの通過が57.0秒という速い流れだったことは確かだが、いくら東京の高速馬場とはいえ、それだけの流れで自己最速の上がり3ハロン「32.4秒」という鬼脚で差してくるのは、力がなければできない芸当だ。
前哨戦でこの内容なら、モーリスが相手となる本番でも十分に楽しみといえるのだが、残念ながらいくつかの「不安点」がある。
まず、サトノアラジンが前走の京王杯SCで、いきなりパフォーマンスを上げた主な要因として2つの可能性が考えられる。
1つは、鞍上の川田将雅騎手と手が合ったという可能性。川田騎手とは前走の京王杯SCで初めてコンビを組んだが、もともと追える騎手であることに加え、先週は日本ダービー(G1)を制すなど充実の時を送っている。
非科学的な根拠ではあるが、騎手を替えることで馬が一変することは競馬では珍しくはない。わかりやすい例でいえば、単純な鞍上強化であったり、逆に馬格のない馬はあえて減量恩恵のある若手騎手に乗り替わることで、本来の力が引き出されたりもする。
そういったわかりやすい理由がなくとも、馬と騎手のちょっとした特徴が噛み合うことで思わぬ変わり身を見せることもある。
川田騎手の騎乗でサトノアラジンがパワーアップしたというのであれば、コンビが継続される安田記念でも当然ながら期待できる。もともと昨年のマイルCS(G1)ではモーリスと0.2秒差の4着。勝ち味を思い出した今なら、決して逆転不可能な差ではない。
ただ、パフォーマンスが上がった理由が「距離が1400mに短縮されたから」という場合は、当然ながら話が違ってくる。前走の圧勝劇には1400mの適性を十分に感じさせるものだったが、果たしてどうか。
そして、もう一つ気になる点が、2走前のダービー卿CT(G3)で負けてしまったことだ。
実は、サトノアラジンの陣営がこの春に描いていたのは、昨年のモーリスのようにダービー卿CTを勝って安田記念へ参戦することだった。しかし、結果は本賞金を加算できない3着。このまま賞金を加算しないことには安田記念への出走が不確かなため、陣営は仕方なく前走の京王杯SCを使った経緯がある。
従って、サトノアラジンの京王杯SCのパフォーマンスは、賞金を確実に上積みするために勝ちに行った100%に近い仕上がりだったということだ。