【徹底考察】函館スプリントS(G3) ティソーナ「優秀な洋芝適正も初のスプリント戦に決して無視できない『不安要素』」
『考察』
NHKマイルC(G1)で4番人気に推されながらも、致命的な出遅れで17着に大敗したティソーナが、今週末の函館スプリントS(G3)で、初の1200m戦に挑もうとしている。
前走のNHKマイルCはティソーナにとって試金石となるはずの一戦だったが、スタートで大きく出遅れたことが響いて17着に大敗。負け過ぎの感もあるが、参考外として考えるのが妥当だ。
それよりも単勝1.7倍で完勝した2走前のマーガレットS(OP)こそ、ティソーナ本来の走りであり、その内容が優れていたからこそ、まだ重賞すら勝っていない本馬にNHKマイルCで4番人気という高い評価が付いたのだろう。
スタートからの3ハロンは「34.6秒」と決して早いペースではないが、ティソーナは楽な手応えで2番手を追走している。逃げたサイモンゼーレそのまま4コーナーまで泳がせ、最後の直線に入るとあっさり先頭へ。
最後は内から器用に伸びてきた2着馬に食い下がられたが、3着以下につけた差は3馬身以上。文字通りの完勝といった内容だった。
このマーガレットSに代表されるようにティソーナの最大の魅力は、優れたスタートセンスと先行力。楽に番手で折り合い、直線で逃げ馬を交わしてそのまま押し切ることが、現在のこの馬の必勝パターンになっている。
だが、その上で気になる点がいくつかある。
まず、これまでティソーナが経験した最も速い流れが、前走のマーガレットSのスタートからの3ハロン「34.6秒」である。先述したように本馬はこれを楽に追走して、2番手につけている。もう少しペースが速くなっても対応できるだろうが、当然、その分最後の脚が甘くなる可能性は否めない。
その上で、函館スプリントSのスタートからの3ハロンは「34秒」を当然のように切ってくる。無論、古馬のそれもスプリント重賞なのだから当然だが、やはり3歳限定の、それも1400mのマーガレットSとは速さに大きな開きがある。
そして、おそらく今年の函館スプリントSのペースを作るローレルベローチェは、前走の高松宮記念(G1)では「32.7秒」という驚異的なペースで逃げた馬だ。レースはさすがに大敗したが、これまでも当たり前のように33秒台で逃げる馬である。
そして、ティソーナとって最も厄介な点が、ローレルベローチェは逆に34秒台の遅いペースでも逃げられる馬で、それができた場合は非常に粘り強い馬と化す点だ。実際に昨秋からの3連勝では、すべてスタートからの3ハロンを34秒台にまとめて逃げ切っている。
その上で、まだスプリント戦を経験していないティソーナが1秒程度速くなるであろうペースの中で、理想とするマーガレットSのような競馬ができるのかは、大きな疑問が残ると述べざるを得ないだろう。
また、マーガレットSが1400mで開催されて今年で17回目になるが、歴代の勝ち馬でその後もスプリントの一線級で活躍したのは、ファリダットとアイルラヴァゲインのみ。この2頭に共通しているのは、良馬場のマーガレットSを1分21秒未満の時計で制していることだ。
各年の馬場差もあるため、あくまで参考にしかならないが、マーガレットSを1分21秒未満の時計で制したのはこの2頭だけだった。その点、ティソーナの走破時計は1:21.3である。