景気も関係ない日本経済の”桃源郷”。毎年2日間で売上げ100億超えを誇る日本一の競走馬セリ市『セレクトセール』には外国の王族もご来店
わずか2日間の開催で合計「131億7350万円」の売上げ、それも前年から6億円の売上げ増……。そんな目の眩むような夢空間が、実は我々が住む日本に存在している。それも東京や大阪などの都心ではなく、広大な緑に囲まれた”田舎”の中に存在しているから驚きだ。
北海道千歳空港から車で数十分にある苫小牧市。敷地面積50ヘクタール、坪に換算すると約15万坪もの広大な敷地に『ノーザンホースパーク』というテーマパークがある。
「花々と緑と水、それに木立を渡る爽やかな風がくつろぎと思い出のひと時を演出してくれます」とあるように、一見は結婚式場も兼ね備えた自然豊かな牧草地だ。実際にサイクリングやパークゴルフなどの施設も充実している。
しかし、それだけで2日間で100億円を超える売上げを叩き出すのが到底不可能なことは、小学生にだってわかるだろう。
実は毎年7月中頃の2日間。この広大な緑に囲まれた『ノーザンホースパーク』のど真ん中に、フェラーリや高級時計ブランドのフランクミュラーの直売店が突如出現。そんな異様な風景の中に、日本だけでなく世界各国から金持ちという金持ちが集結する。
しかも、彼らの”お目当て”は高級外車でも高級ブランド時計でもなく、「社台」という世界屈指のブランド力を誇る血統書付きの「馬」なのだ。
バブル崩壊にリーマンショック、ギリシャの経済破綻……そういった経済低迷の要因も「関係ない」と言わんばかりに、売上げは毎年のように右肩上がり。恐ろしいまでの成長を続けているのが、社台グループ主催の競走馬セリ市『セレクトセール』である。
史上最高131億7350万円を売り上げた昨年も、1頭のディープインパクト産駒が2億3500万円で取引された。落札したのはセガサミーの社長・里見治氏だ。他にも武豊や池添謙一を始めとする競馬関係者はもちろん、馬主を兼業する大企業の重役クラスが一堂に会し、さながら社交場の雰囲気だったようだ。
これが我々一般市民にとって”はるか遠くの世界の出来事”であることは理解できる。ただ、何故『セレクトセール』だけが、まるで経済の”桃源郷”のように不況の波に左右されることなく、驚異的な売上げを伸ばし続けているのだろうか。
確かに有馬記念の1着賞金が2億5000万円に設定されているように、馬主として一山当てればたちまち億万長者だ。そして競馬が「社台の運動会」と揶揄されるくらい社台グループの一人勝ちの状態なのだから、「社台の馬を買えばいい」という話も理解できる。
だが、それは『セレクトセール』が毎年100億円を超える売上げを記録している説明にはなっても、ずっと売り上げ記録を更新している要因にはならないと思う。「(お金を)持ってる人は持ってるんだよ」という安易な話では片づけられないだろう。