セレクトセール裏回顧~馬主勢力の移り変わり・生産界の闇~
祭りが終わった。7月11日から12日まで2日間にわたって開催されていたセレクトセールは、過去最高の149億4210万円という売上を達成して幕を閉じた。900名を超える購買者登録、そのうち外国人馬主登録は過去最高の24名、最高価格2億8000万円、落札頭数390頭、平均落札価格約3842万円とまさに記録づくしのこのイベント。
もちろん思い通りに売れた生産者、売れなかった生産者、狙っていた馬を落札できた馬主、できなかった馬主と悲喜こもごものドラマがそこにあったのだ。
このセレクトセールでもっともお金を使ったのは既報通りサトノでお馴染みの里見治氏。セガサミーの会長として今や競馬界で最も勢いのある馬主だ。その資金力は馬主界でも抜けており、かつて「カンコンキン」と呼ばれた関口房朗・近藤利一・金子真人の三大馬主の全盛期を凌駕するほど。今年使ったのは13頭に合計13億2700万円と破格だが、これは里見氏が手にする株の配当とほぼ同額と言われている。
ちなみに里見氏は昨年のセレクトセールでも7億6300万円を使っており、今やセレクトセールにとってなくてはならない馬主の一人だ。またセレクトセール以外でも庭先取引で馬を購入しており、その金額は年間20億円に達するのではないかといわれている。あとは届きそうで届かないG1の勲章をいつ掴むかということだろう。里見氏の馬選びはディープインパクトの調教師だった池江泰郎氏が行っているとか。里見氏と池江氏は契約関係にあり、月額100万円の報酬をもらっているとの話も聞く。
ディープインパクトといえば金子オーナーも今年はかなりの投資を行った。ディープインパクトやキングカメハメハなど自ら所有していた馬など総額8億3700万円は一般人の感覚とはケタ外れなレベル。秋には愛馬マカヒキが凱旋門賞に挑戦するなどまさに日本競馬を牽引する馬主と言えるだろう。
逆にかつて栄華を誇りながら今や脇役にまで下がってしまったのが、アドマイヤでお馴染みの近藤利一氏だ。近藤氏は2007年には総額13億円以上をセレクトセールで使ったこともあるが、今年は6頭で2億9300万円。おそらく半持ちで実際の購入額は半分と考えると少々寂しい気もする。
さらにジャスタウェイのオーナーで脚本家の大和屋暁氏はジャスタウェイ産駒を4700万円で購入、大魔神こと佐々木主浩氏も2500万円でキングカメハメハ産駒を購入と著名人も話題を提供した。なおキタサンブラックでお馴染みの北島三郎氏は基本的に安い馬を発掘して走らせるタイプの馬主で、セレクトセールでの活躍は見られない。
生産者の現実は…
そして落札する側がいれば落札される側がいるのがこの世界。では生産者的にはどうなのだろうか。
実はセレクトセールはどんな馬も上場できるわけではなく、上場申請に対し日本競走馬協会による審査で基準をクリアした馬のみが上場できる仕組みになっている。多くの購買者が訪れ価格も跳ね上がるセレクトセールは生産者にとって魅力の市場で、ここに上場することを目指す生産者もいるほどだ。