JDDをキョウエイギアで勝利の矢作芳人調教師、ガン手術へ。開業時からの「夢」を叶えた愛馬とスタッフからもらった勇気
13日に大井競馬場で開催された3歳ダート王決定戦・ジャパンダートダービー。ゴールドドリーム、ストロングバローズの2強に注目と人気が集まる中、鮮やかな抜け出しで勝利したのは4番人気のキョウエイギアだった。ディープスカイ産駒である同馬の能力と、鞍上戸崎圭太騎手の手腕がガッチリ噛み合ったレースだったといえる。
そんなキョウエイギアを管理するのが矢作芳人調教師。日本の最高学府である東京大学に入学するのが「普通」レベルの名門・開成高校出身から調教師になるという異色の経歴である同師は、グランプリボスやディープブリランテ、リアルスティールなど強豪を多数育ててきた名伯楽。現在リーディングトレーナー争いでも35勝と、2位の角居勝彦師を11勝引き離す独走状態となっている。
矢作師は父が大井の調教師であり、大井G1勝利は一つの目標だった。「ここが目標だったし、スタッフが一丸となって仕上げてくれました」と涙ぐみながら今回の勝利を喜んでいたが……。
実は矢作師、前立腺がんを患っており、21日に手術をすることとなっている。病を左右する手術が迫る中、自身が管理する馬が自身の夢を叶えてくれた。スタッフ一丸となって勝利を追い求め、掴んだ勝利だったというわけだ。
「スタッフが”留守の間もリーディングを守る”と言ってくれたし、きょうは馬からも勇気をもらいました」と涙する矢作師。本命視されない中での大勝利は、本人やスタッフの意志がキョウエイギアに乗り移った結果なのかもしれない。
ここ数年は常にリーディング上位の常連で、管理馬の重賞勝利も多数。海外遠征にも積極的な同師は、競馬界の中でも当然重要な存在だ。病を乗り越え、一日でも早く元気な姿で帰ってきてほしい。