有馬記念(G1)武豊とオジュウチョウサン「偉大なる挑戦」最終章……常識外れの11連勝、今世紀最強障害馬が示す「答え」は
「今年は有馬記念を目指したい――」
昨年の有馬記念で障害馬にも関わらず、多くのファンがオジュウチョウサンに投票したことに感動した長山尚義オーナーの呼び掛けで始まった挑戦は、競馬界に激震を走らせた。
それ以降の約半年間、ここまで「議論」を呼んだ馬が果たして過去にいただろうか。
伝説の障害馬グランドマーチス以来、史上2頭目の殿堂入りの可能性も報じられていた今世紀最強障害馬の平地転向に、多くの競馬ファンは夢を感じ、それと同じくらい多くの競馬ファンが無謀な挑戦に疑問を呈した。鞍上は武豊騎手に決まったが、長く障害レースで主戦を務めた石神深一騎手の事情もあり、競馬一の人気を誇るレジェンドであっても大きな賛否を生んだ。
大注目の中、福島競馬場に姿を現したオジュウチョウサンは、まず約4年ぶりの平地挑戦となった開成山特別(500万下)を圧勝。未勝利のまま障害馬に転向した本馬にとって、これが平地初勝利となり、同時に目標とする有馬記念出走へ「平地1勝」という最低条件を満たした。
レースは好位から早め先頭に立つ3馬身差の圧勝だったが、上がり最速が本馬の37.1秒という稍重でのレース。劇的な圧勝劇に福島競馬場はG1並みの歓声に包まれたが、最大の課題といえる「平地のスピード」に関しては、ベールに包まれたままという冷静な声もあった。
競馬の常識を打ち破る、壮大な夢の挑戦。その可能性の片鱗が窺えたのが、平地2勝目を飾った前走の南部特別だった。舞台は稍重の福島2600mから、良馬場の東京2400mと大きく変化。今開催の東京はアーモンドアイがジャパンC(G1)で世界レコードを記録したように、重要視されるのは近代競馬の主流となる「スピード」だ。
多くの識者が予想した通り、この舞台でオジュウチョウサンは大いに苦戦した。半馬身差で勝利したものの、最後は2着馬ブラックプラチナムの脚色が完全に勝っており、最後に本馬が刺さって、まともに追えなかったことで救われた格好だ。レース後、武豊騎手は「タイムを見ると、まだ一線級とは差を感じる」と明らかな不満を示した。