JRA調教師の目標は「餌やり」からの卒業!? 競馬界の「影の王」ノーザンファーム外厩大成功に存在意義ズタズタ……
「自分たちの手で馬を仕上げたい厩舎関係者にとっては、そりゃ本意ではないですよ。ただ、それ(外厩調整)で尽く結果が出ていますし、生産者兼オーナーであるノーザンファームは基本的には調教師よりも立場が上ですから……。誰も”ノーザンの意向”には逆らえないのが現状です。
最近では、昔のように全面的に調教を任せてもらうどころか『どれだけ早く、外厩から厩舎に下ろしてもらえるか』が調教師の評価という声もありますよ。言い換えれば、完全にノーザンファームが主導権を掌握しているということです」(競馬記者)
実際に徹底した外厩利用で昨年の有馬記念(G1)を勝ったブラストワンピースの大竹正博厩舎は、とにかく「10日競馬」が多いことで有名だった。かつての看板馬ルージュバックなどは、まさにその代表的な例だろう。
しかし今年、ブラストワンピースは大阪杯の約3週前に帰厩する予定が発表されている。大竹厩舎にとっては「10日競馬」の2倍にあたる約20日間の調整期間を得たということだ。
「ノーザンファームにおける大竹厩舎の評価が上がったということでしょうね。例えば、昨年のマイルCS(G1)を勝ったステルヴィオの木村哲也厩舎も以前は『10日競馬』が多い印象でしたが、かなり減りましたよ。直行組が多い中、中山記念(G2)から大阪杯に向かうプランも信頼の証でしょう。
最近ではそういった例が増えており、厩舎側から『励みになる』という声も。結果を出せば自分たちに任せてもらえる時間が増えるというのは、厩舎のモチベーションにもつながっているようです」(同)
確かに冒頭で触れたワグネリアンは、大阪杯にぶっつけながら友道康夫調教師からは「来週あたりに栗東へ戻ってくる」という話が聞かれている。つまり友道厩舎には大阪杯まで、約2か月の調整期間が与えられているということだ。
無論、馬の状況によって変動するものだろうが、友道厩舎はワグネリアンだけでなく、昨年の2歳王者アドマイヤマーズやジャパンC(G1)を勝ったシュヴァルグラン、ダービー馬マカヒキ、秋華賞(G1)やドバイターフ(G1)を勝ったヴィブロスなど、これまでもノーザンファーム生産馬で結果を残してきた。当然、ノーザンファームの信頼も厚いはずだ。
調教師が当然のように中心にとなって馬を調整していた一昔前と比べれば、オールドファンにとっても悲しいところだが、プライドだけで飯が食えないのは競馬界でも同様のようだ。各牧場の調教施設が充実し「外厩時代」となった昨今、厩舎や調教師の役割も時代に応じて変化していくのかもしれない。