「時代遅れの血筋」に「日本で勝ち切れない欧州種牡馬」を次々と覚醒させるマツリダゴッホは、やはり「狂気の天才芸術家」なのか……競馬界の鬼才がサラブレッド生産の常識を覆す
今回、取り上げたカルヴァリオ、それにロードクエストの共通点は冒頭で触れた通り「母系が地味なこと」である。ちなみにロードクエストの母マツリダワルツは、岩手競馬のオークスに値するひまわり賞の勝ち馬だが、本来、とてもJRAで重賞を勝つような産駒を送り出せる母系ではない。
さらにはマツリダゴッホ産駒の中で、ロードクエストに次ぐ稼ぎ頭となるアルマワイオリも祖母に1992年の2歳女王スエヒロジョウオーを持ちながらも、その父はトウショウペガサスという零細血統だ。
だが、この3頭に共通するのは、母父に底力に優れた「欧州の種牡馬」がいることだ。
カルヴァリオには1996年のキングジョージ(G1)を制したペンタイアが、ロードクエストには1997年のブリーダーズCターフを制したチーフベアハートが、そしてアルマワイオリにも1997年のジャパンC(G1)を制したピルサドスキーが配合されており、共に日本では期待されたほどの成功は収められなかったが、マツリダゴッホと配合されたことで再び輝きを放っている。
「時代遅れ」と揶揄されるような地味な血統が、欧州の底力溢れる種牡馬を経由し、マツリダゴッホと配合されることで現代競馬において活躍する……。
まるでマツリダゴッホが、地の底に潜った「古き良き血の力」を覚醒させる”スイッチ”のようにも感じられるだけに、カルヴァリオの今後の活躍も楽しみだ。