【徹底考察】宝塚記念(G1) ドゥラメンテ「失われた『信頼』と『屈辱』のファン投票6位。王者ドゥラメンテの『現状』を考察」
『考察』
ドゥラメンテにとって春のグランプリ宝塚記念(G1)のファン投票の結果は、まさに屈辱的なものだった。もう、王者はそのカリスマ性を大きく失ってしまったのだろうか。
ドゥラメンテの「現状」を知るためには、同世代相手の3歳春の走りは古すぎるし、9カ月の休み明けでプラス18kgの中山記念もアテにはならない。そうなってくると前走のドバイシーマクラシック(G1)を紐解く以外にないだろう。
前走のドバイシーマクラシックでドゥラメンテはポストポンドに敗れた2着だった。この2頭の走りを中心的に追っていく。
中山記念に続いてスタートは一息で、後方からの競馬となる。一方のポストポンドはまずまずのスタートから先団を見る形で4、5番手に位置取った。
レースはハイランドリールが単騎で逃げる淡々とした流れで、スローペースに落ち着いた。各馬がほぼ一段となったまま、ドゥラメンテは前から7番手で後方からは3頭目の外で、いつでも動ける位置におり、その2馬身ほど前にポストポンドがいる。
3コーナーから4コーナーに差し掛かったところでペースが上がり、先頭に並び掛けようとするポストポンド。ドゥラメンテもすぐ後ろからスパートを開始するが、差が縮まらない
直線に入ると、ポストポンドがあっさり先団を飲み込んで先頭へ。ドゥラメンテも必死に食い下がるが、差が詰まらずに並びかけることができない。ラスト200mを切ったところで、ドゥラメンテが内側に斜行。周りに被害はなかったが、そこからポストポンドとの差は開く一方となり、最後は2馬身差で完敗した。
これが、ドゥラメンテが世界の壁に屈したドバイシーマクラシックだった。
まず、現時点でのドゥラメンテの能力に関してだが、負けた相手は現在芝の2400mで世界一の強さを誇るポストポンド。期待が大きかった分、落胆もあっただろうが、冷静に考えれば負けても仕方がない相手といえる。それが例え、2馬身差の完敗であったとしてもだ。
向こうは、これまで何度も世界的なレースを重ねて評価を上げてきた正真正銘の世界トップホース。言葉を選ばなければ、エイシンヒカリやジャスタウェイのような1度のレースのパフォーマンスで世界一になったわけではないとうことだ。簡単に超えられる壁ではない。
それよりも3着のラストインパクトに2400mという距離で1馬身1/2という差をつけたという事実が、ドゥラメンテの能力の高さを示している。ラストインパクトは昨年のジャパンCでショウナンパンドラからクビ差の2着。3着ラブリーデイには先着している強豪だ。
従って、最大の敗因は落鉄といわれているが、そんな”不明瞭”な敗因(仮に落鉄がなければポストポンドとの差がどれだけ埋まっていたのかが、まったく見えない以上”不明瞭”という表現を使わざるを得ない)を丸々差し引いても、今のドゥラメンテの能力は十分に宝塚記念のメンバーに入っても「トップクラス」といえるだろう。
だが、気になるのはラスト200mを切ったところで、ドゥラメンテが内側に斜行したことだ。
これには本馬が、昨年の皐月賞の最後の直線入り口で大きく外側に斜行したことを取り上げ、その悪癖がまだ解消されていないと一部のメディアが報じているが、それはまったくの見当外れだ。
まず、皐月賞を迎えた時点でドゥラメンテにとっては初の右回りだった。それまで4戦はすべて東京で競馬しており、皐月賞で初の右回り、それも小回りの競馬をしたために、加速した4コーナーで手前が上手くわからなかったために外に膨らんだのだ。
それに比べてドバイシーマクラシックでの斜行は方向こそ同じだが、場所はゴール前ラスト200m前後。完全に直線の半ばということであり、コーナーリングや手前は関係ない。それにこの癖は中山記念の走りを見る限り、すでに修正されている。
では何故、内側に斜行したのか。これは俗に「刺さる」という状況で、同じ鞍上M.デムーロ騎手で例を挙げれば、今年の皐月賞でのリオンディーズの斜行がそれにあたる。簡潔に述べれば、苦しくなった馬がよれるということだ。
実はドゥラメンテは同じ左回りの2400mだった昨年の日本ダービーでも、最後の直線の勝負所で大きく内側に切り込んでいる。デムーロ騎手が内側に入らないように、必死に内からムチを入れて立て直そうとしているが、それでも内に切り込んでいった。
つまりドゥラメンテは苦しくなると、左側にもたれる癖があるということだ。