JRA「進化3段ロケット」最強リスグラシュー驚異の成長を矢作師語る
管理馬リスグラシューがJRA年度代表馬に選出された矢作芳人調教師。
今年の頭には自身がサンスポに掲載するコラム『信は力なり』で、「調教師として生涯に一度は取りたかった賞なので、この上ない栄誉であり、喜びである」とその喜びを爆発させていた。
そして、矢作調教師はその栄光を自身にもたらした孝行娘リスグラシューについて綴っている。G1制覇にはまであと一歩及ばず。シルバーコレクターとも揶揄されたリスグラシューだが、4歳時にエリザベス女王杯(G1)で悲願のG1制覇を達成。G1馬として5歳時を迎えると、矢作氏いわくここから『明らかに3回進化した』という。
1度目は『宝塚記念の前』だといい、2度目は『秋のオーストラリア遠征』。若い頃のリスグラシューは輸送で大きく馬体を落としていたが、この時期は「精神面でもどっしり」し、大勢の観客に囲まれた待機馬房でも居眠りして見せるほど、落ち着いていたという。そして3度目は『有馬記念の前』だといい「背が伸びて筋肉量も増えた」と明かしている。
「リスグラシューは宝塚記念では2番手追走。直線入り口で逃げたキセキに並ぶと、そこから突き放して圧勝を飾りました。コックスプレートでは不利な外枠のため序盤こそポジション取りに苦戦し、後方からの競馬になりましたが、4角で外から進出すると残り100mで一気に抜き去り優勝。そして有馬記念では道中は最ウチをロスなく回り、最後の直線では大外に出されると目の覚めるような末脚を見せて2着に5馬身差をつけて圧勝。どんな競馬もこなす自在性を見せつけてG1競走3連勝を飾っています。
矢作調教師はリスグラシューの引退式で『(引退は)もったいないですね。寂しいです』と語っていましたが、あの3戦を見ればそれも当然です。晩年に大成する傾向があるハーツクライ産駒らしい成長曲線を描いた同馬ですし、今年現役を続行していれば、さらにG1競走での連勝も伸ばしてくれていたとも思います」(競馬誌ライター)
惜しまれつつもターフを去ったリスグラシュー。
現在、矢作厩舎には昨年のオークス馬ラヴズオンリーユー、ダートで復活したモズアスコット、さらにホープフルS(G1)を勝ち、今年のクラシックを見据えるコントレイル、そしてこれら以外にも多くの才能あふれる競走馬が所属している。矢作調教師はリスグラシューと培った“レガシー”をこれからの育成に生かしていくという。これは残された僚馬たちにとってプラスに働くはずだ。
矢作厩舎から進化に次ぐ進化を続け、“第2のリスグラシュー”とも呼ばれるほどの活躍を見せる競走馬が出てくることを期待したい。