JRA「やっちまったと愕然」支えてくれた関係者に感無量! 距離誤認のあの若手騎手が真相を語る
2018年、10月13日。JRA史上初の珍事が起こった。同年3月にデビューし、新人最多の7勝を挙げていた山田敬士騎手が、新潟6R(ダート2500m)で2番人気ペイシャエリートに騎乗し、競走距離を誤認したのである。
山田騎手は先頭で迎えた1周目の直線入り口からムチを入れて馬を追いだし、ゴール板通過時にレース終了だと勘違い。他の騎手からの注意もあり、向正面からレースに再合流したものの、勝ち馬から4秒8差離された最下位12着となった。
競走距離を間違えるという致命的なミスに、顔面蒼白で検量室に引き揚げた。JRA広報は「過去にゴール板を間違えたというケースはあったが、距離を間違えたのは初めて」と説明した。
前代未聞の事件となった当時の真相と現在の心境について山田騎手が『平松さとし氏』の取材に語ってくれた。
「たまたま見たテレビでディープインパクトの特集をしていました。気になってその後の有馬記念を見たら乗っていた武豊さんが格好良くて、憧れるようになりました」
山田騎手が騎手に憧れるきっかけとなったのは、ディープインパクトとのコンビで華々しい活躍を見せていたレジェンド騎手の姿だった。
女手一つで決して裕福ではなかったが、母はそんな山田騎手を察して乗馬を始めさせてくれた。しかし、中学卒業時に受験するも不合格。馬術部のある高校に入り、再受験するも不合格。合格できたのは3度目の受験という苦労人だ。
18年に念願の騎手デビューを果たし、同期では最多の7勝を挙げていた。事件が起きたのは10月13日のことだった。山田騎手は騎乗する新潟6Rの条件を確認した。
「少し乗り数が増え、競馬に慣れて来た事で、集中力を欠いていました。自分の未熟さ以外に何もありません」
事件当日について山田騎手は振り返った。
「ダート2500m戦で、バレットの人と『珍しい距離ですね』って話をしていたんです」
初騎乗だったペイシャエリートは逃げたときに好走している馬だった。