【徹底考察】菊花賞(G1) エアスピネル「秋初戦で砕け散ったエリートのプライド……すべてを失った相棒に武豊が施す『最後の魔法』とは」
『考察』
「菊花賞(G1)に向けた競馬をする」
秋初戦の神戸新聞杯(G2)の戦前、エアスピネルの主戦・武豊騎手はそう話していた。そして選んだ作戦が後方待機。15頭中13番手から直線で大外に持ち出し、末脚に懸けたが結果は5着。
これまで何度も敗れながらもディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンド、リオンディーズにしか先着を許したことがなかったエアスピネルのプライドが砕け散った瞬間だった。
もっともがっかりしたのは、武豊騎手だろう。以前から「身体能力だけならマカヒキ、サトノダイヤモンドに引けを取らない」と、この馬の能力を高く評価していただけに、この結果には「精神面の成長は感じられたが、競馬の内容としては不合格」と言い切った。
ただ、この敗戦の中でいくつか「判明したこと」もある。
まずは冒頭で触れたエアスピネルの神戸新聞杯の内容は、主戦騎手の言葉を借りるなら、まさに「身体能力」を測りに行ったレースだといえる。4コーナーで大外をぶん回しての後方一気の競馬は、いわば正攻法。それこそディープインパクトなどが、圧倒的な「身体能力」にものと言わせて他馬をねじ伏せてきた戦法だ。
武豊騎手がこの作戦を選択した時点で、エアスピネルという馬の総合能力は大きく損なわれている。
何故なら、競馬は決して「身体能力」の高さだけで着順が決まるものではなく、他にも多くの能力が総合的に作用して決着するからだ。
エアスピネルの最大の武器は「操縦性の高さ」と「立ち回りの上手さ」である。これまで本馬が世代のトップクラスに君臨してきたのは、武豊騎手が常にこの2つの武器を最大限に活かして競馬をしてきたからこそだ。
その上で、神戸新聞杯の本馬は、最後の直線まで一貫して後方13番手を追走。この時点で「操縦性の高さ」が活かされておらず、最後の直線で大外をぶん回している時点で「立ち回りの上手さ」が死んでいる。