【徹底考察】チャンピオンズC(G1) ラニ「米三冠皆勤馬は終わったのか?巻き返しに必須の条件は昨年の再現!?」
逃げて4着に粘ったモンドクラッセの踏んだ前半3Fのタイムが36秒2。これは2010年にレースが創設されて以来、最遅タイのスローペースだ。エンジンの掛かりが遅く一瞬のキレ味に欠けるラニにとっては、これほどいやなペースもなかっただろう。3コーナーの勝負どころはまさに隊列全体の速度が上がったポイントで、ここでの遅れが直接の敗因になったと判断できる。
【血統診断】
父タピットは現役時代、G1ウッドメモリアルSを含む6戦3勝。数度の病気に見舞われたため競走馬としては大成しなかったものの、06年の初年度産駒からBCジュベナイルフィリーズを制したStardom Boundを輩出するなど大活躍を見せ、14&15年のアメリカリーディングサイヤーに輝いた。日本での知名度はアメリカほどではないが、12年のフェブラリーS優勝馬テスタマッタが父タピットで、仮にラニがチャンピオンズCを優勝すれば、同産駒の日本G1タイトル2つ目となる。
前項で述べたように、兄は今年のJBCクラシック勝ち馬アウォーディーだが、あちらは父ジャングルポケット。1歳上のアムールブリエも父は別ながらダート牝馬界の最前線で活躍しており、ヘヴンリーロマンスは種牡馬を問わずダートの一流馬を出すようだ。
兄姉とラニの大きな違いは、操縦性とポジション。兄姉が抜群のスタートから好位のポジションを確保する安定した立ち回りを武器としているのに対し、ラ二はスタート・二の脚ともにイマイチで、ほとんどのレースで最後方からのレースを余儀なくされる。おまけにみやこSのレースぶりから明らかなように、勝負どころでの反応が悪く、前半がゆったりしたレースでは馬群の加速についていけず、位置取りを下げてしまう恐れも否定できない。
【結論】
アメリカ3冠の内、最も距離の長い(2400m)ベルモントSのみで馬券圏内を確保できたように、基本的に距離が伸びれば伸びるほど良さが出るタイプ。芝とダートで路線は異なるものの、タイプ的にはゴールドシップをイメージすればわかりやすい。どちらも①スタートが遅い②常に最後方のポジション③トップギアに入るまで時間を要する④雄大なフォームと大きなストライドという点で共通しており、走りとは関係ないが毛の色や気性の激しさまで瓜二つである。
ラニにとっての好材料は、前走時に松永幹調教師が「使いながら良くなると思う。チャンピオンズCが目標なのでそこにつながる競馬が出来れば」と語っていること。本番まで叩かれつつ調子を整えていると考えれば、上積みが見込めないことはない。実際、体重は2走前の534キロから前走の542キロと増えており、前走の時点ではまだまだ絞れる余地があったと見ることもできる。とはいえ、チャンピオンズCの舞台は、惨敗した前走と同じ1800m。これがジャパンCダート時代の2100mだったらまた違ったかもしれないが、距離延長の恩恵がなければガラリ一変を想像するのはさすがに厳しいか…。