JRAを追放された天才が語る名勝負の裏側。「ひと呼吸待てば勝っていた」武豊ナリタブライアンに屈した24年前のスーパーG2
コントレイル、デアリングタクトという2頭の3冠馬が誕生し、アーモンドアイが9冠を達成した2020年の中央競馬。それ以外にも、ソダシが白毛馬として初のG1制覇を達成するなど、まさに記録づくめの1年となった。
まだ1年が終わったわけではないが、3頭の3冠馬によって行われたジャパンC(G1)を今年のベストレースに推すファンも多いのではないだろうか。それ以外にもグランアレグリアが直線15番手から他馬をごぼう抜きにしたスプリンターズS(G1)、絶体絶命に思われたフィエールマンがわずかハナ差で差し切った天皇賞・春(G1)も見ごたえのあるレースだった。レースの数だけドラマが誕生したと言えるだろう。
その中でもマッチレースといえば、菊花賞(G1)が思い出される。
最後の直線ではコントレイルとアリストテレスのデットヒートが繰り広げられ、勢いに勝るアリストテレスが交わすのではないかと思われた。だが、コントレイルは最後まで先頭を譲ることなくゴールして3冠を達成。3着のサトノフラッグには3馬身半という決定的な差をつける2頭のマッチレースである。歴史的快挙の達成と同時に、レースとしても後世に語り継がれるものとなったはずだ。
ただ、最も有名なマッチレースといえば、1996年の阪神大賞典(G2)ではないだろうか。
ナリタブライアン(94年)、マヤノトップガン(95年)という2頭の年度代表馬が出走した阪神大賞典。他にも、日経新春杯(G2)の勝ち馬ハギノリアルキングなども出走したが、人気は上位2頭で分け合った。
一昨年、3冠馬に輝いたナリタブライアンは、前年の阪神大賞典後に故障を発生。秋に復帰を果たすも、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念と古馬王道路線のG1レースでは凡走が続いていた。復活を願うファンも多く、単勝2.1倍の2番人気に支持された。
それとは対照的に、前年の年度代表馬マヤノトップガンは菊花賞、有馬記念とG1・2連勝で勢いでは優勢。単勝オッズは2.0倍で、僅差の1番人気だった。
新旧の年度代表馬対決が注目を集める一方で、ナリタブライアンの武豊騎手、マヤノトップガンの田原成貴騎手という名手による勝負にも熱い視線が注がれた。当日の入場者数は土曜開催としては異例の5万9896人。翌年から同レースが日曜開催に変更されており、JRAを動かした歴史的一戦という側面も持っている。
レースはマヤノトップガンが4番手から進め、それを見る形でナリタブライアンが6番手で続いた。2周目の3コーナーで早くもマヤノトップガンが先頭に立つと、ナリタブライアンも進出を開始。残り600mを切るころには2頭が横並びになり、そこからは後続を引き離して2頭のデッドヒートになった。
マヤノトップガンがわずかにリードを保っていたが、ゴール寸前でナリタブライアンが交わして「アタマ差」の決着。3着には9馬身差をつけており、まさに2頭の一騎打ちのレースであった。
この名勝負を繰り広げた武豊騎手は今なお競馬界を牽引するレジェンドだ。その一方、田原元騎手は1999年に調教師として厩舎を開業するも、2001年に銃刀法違反、覚醒剤取締法違反で逮捕、調教師免許をはく奪された。その後も、事件を起こしては逮捕を繰り返し、JRAから無期限の関与停止処分を言い渡され、表舞台から姿を消したのであった。
そんな田原元騎手が、『東スポ』の取材に応えたことが話題となっている。