JRA「価値を理解していない」コントレイル矢作師マスコミに不満あらわ!? 改めて問われるクラシックの重要性…… 自ら選んだ頂上決戦に敗れるも未練隠せず
2005年のディープインパクト以来となる無敗三冠を達成したコントレイル(牡4、栗東・矢作芳人厩舎)を管理する矢作調教師にとって、昨年の年度代表馬にアーモンドアイが選出されたことは受け入れ難かったようだ。
『サンケイスポーツ』に寄稿している自身のコラム【矢作芳人調教師 信は力なり】内で、「今年還暦を迎える自分の感覚は、もう古いのだろうか?」と心境を吐露。詳細については本記事をご覧いただきたいのだが、その他にも「マスコミと現場の意識の乖離が自分には残念でならないし、とても悲しい気持ちになっている」と自身の見解を述べている。
おそらくこの発言のきっかけとなったのは、年度代表馬の選出基準についてではないだろうか。6日に発表されたJRA賞で283票中236票を集めたアーモンドアイが1位となり、コントレイルは44票で2位と思わぬ大差がつく結果となった。
1954年から始まった年度代表馬の選出はシンザン以降、三冠を達成した牡馬はミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルと6頭すべてがその年の年度代表馬に選ばれている。無敗で三冠を成し遂げながら、コントレイルは初めて受賞を逃すという屈辱を味わった。
確かに受賞したアーモンドアイの芝G1・9冠は史上初の記録ではあるが、それはあくまで現役生活の集大成といえるものである。昨年に限った場合はヴィクトリアマイル、秋の天皇賞、ジャパンCの3勝となり、牝馬限定G1のヴィクトリアマイルが含まれていることを考慮すると、無敗でクラシック三冠を制したコントレイルが上の評価を受けてもおかしなことではない。
にもかかわらず、アーモンドアイがコントレイルを凌ぐ多数の票を集めた理由は、やはり直接対決となったジャパンCの結果が最大の要因となりそうだ。昨年の同レースはアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトといった新旧三冠馬が一堂に会し、世紀の対決ともいわれた超ハイレベルの熱戦が繰り広げられた。
レース前はむしろ、アーモンドアイは年度代表馬争いで2頭に対し後れを取っていたことも事実だ。秋の天皇賞を優勝したとはいえ、フィエールマン、クロノジェネシスにあわやの勝利。春の安田記念ではグランアレグリア相手に2馬身半の完敗を喫していた。ジャパンCでの大逆転がなければコントレイル、デアリングタクトの勝った方がそのまま年度代表馬の栄冠を手に入れていた可能性が高い。
しかし、先に参戦を表明していた2頭の対決に、アーモンドアイが最有力と見られていた香港カップ(G1)を回避して参戦を決定した。天皇賞を制していたことで、最重要課題であった8冠馬の栄誉を手に入れていたアーモンドアイ陣営にとって、直接対決を制することにより、G1勝利数が3勝で並び年度代表馬受賞の目もあることは、当然ながら意識していたと想像できる。
そして、陣営の目論み通りアーモンドアイが2頭を破ったことが年度代表馬選出の決定打となったのは間違いないだろう。
その一方で、コントレイル陣営は当初からジャパンCを予定していたデアリングタクトとは異なり、有馬記念(G1)に出走する可能性があったことにも触れなければならない。
もし、コントレイルが父ディープインパクトと同じく有馬記念を使っていたとしたら、優勝することが条件とはいえ、年度代表馬を確定することができたかもしれない。仮に出走をしなかったとしても、無敗の三冠で年内休養ならアーモンドアイに年度代表馬の座を奪われずに済んだ可能性も残されていたのではないか。