JRA グラティアス「ルメール確保」は望み薄!? はたしてレシステンシア弟は捨てられたのか…… 皐月賞(G1)直行コントレイル、サートゥルナーリアとの決定的な違い
1月17日の京成杯(G3)を快勝したグラティアス(牡3、美浦・加藤征弘厩舎)は、トライアルを使わずに4月18日の皐月賞(G1)に直行することが明らかになった。
京成杯で2着に下したタイムトゥヘヴンは昨年12月の未勝利戦を8馬身差で圧勝した素質馬。そのときの勝ちタイム2分3秒0は、同日メインの2歳G1・ホープフルSを制したダノンザキッドの2分2秒8と遜色ない好時計で勝利を飾っていた。
そんな素質馬を相手に2馬身半の差をつけて楽勝して見せたのが、C.ルメール騎手とのコンビで出走したグラティアス。本番の皐月賞と同じ中山・芝2000mの重賞を勝利して2戦2勝。一躍クラシック候補の名乗りを上げたのだった。
勿論、これにはルメール騎手も最大級の賛辞を与えた。
レース後、「G1レースにもいけると思います」とクラシックを意識したコメントまで残している。19年の阪神JF(G1)を制したレシステンシアの半弟という良血だけに、ルメール騎手がもう1頭のお手馬であるオーソクレースとどちらを選択することになるのかにも大きな注目が集まっていた。
管理する加藤征弘調教師は「この後はオーナー、牧場サイドと相談して決めることになります」と触れていたように、今後の動向については未定だったものの、陣営が下した決断は本番への直行だった。
重賞を制したことにより、賞金面で皐月賞出走は既に確実なグラティアスだが、まだ2戦とキャリアが浅いことは些か懸念が残る。
「以前はトライアルを一度使ってから本番というのが定番でしたが、近年は調教技術の発達もあって直行も珍しくない時代になりました。皐月賞は昨年のコントレイル、一昨年のサートゥルナーリアとホープフルS(G1)から直行で優勝しています。トップクラスの馬なら完璧に仕上がっていなくとも、能力さえ出せる状態にあれば休み明けでも大きな問題にはなりません。
ただ、これらとグラティアスを同列に扱うには、まだまだ怖さがあります。同馬と違ってさきほどの2頭は1走多い3戦のキャリアだった上に、G1勝ちの実績もありました。古馬ならまだしも、レース経験の浅い3歳馬にとって1戦少ないことは致命的な減点となる可能性があります。ましてや世代トップクラスの馬が集結するクラシックですから、これまで経験したことのない厳しいレースとなる可能性も高いでしょう」(競馬記者)
この逆境に追い打ちを掛けることになるのは、前走京成杯組の皐月賞での好走例が少ないことである。1999年に芝1600m戦から芝2000m戦に変更されて23年経つ京成杯だが、歴代の勝ち馬でG1馬となったのは10年のエイシンフラッシュただ1頭。次走でダービー馬の栄誉を掴んだ名馬でさえ、皐月賞は11番人気で3着に敗れている。
大物感溢れる勝ち方が評価され、皐月賞で5番人気に支持された昨年の京成杯勝ち馬クリスタルブラックも直行したものの16着と惨敗したのは記憶に新しい。奇しくも同馬は2戦2勝で京成杯を制したようにグラティアスと同じ臨戦過程でもあった。
また、グラティアスの騎手が発表されなかったことは、ルメール騎手がオーソクレースを優先した可能性も考えられる。オーソクレースを管理するのは関東の名門・藤沢和雄調教師。ルメール騎手とは17年にレイデオロとのタッグでお互いにダービー初優勝を分かち合った仲だ。現役最強馬の呼び声が高いグランアレグリアの主戦として絶対的な信頼関係にあり、今年が最後のクラシックとなる藤沢師に恩返ししたい気持ちも強いだろう。
G1で多くの有力馬から依頼を受けるトップジョッキーだけに、最終的な決断は直前になってからの可能性は高い。最終的な決定が発表されるまで鞍上については保留となるだろうが、グラティアス陣営にとって皐月賞直行の判断はプラスとならない可能性の方が高いかもしれない。