JRA「ポスト武豊」と呼ばれた浜中俊の”ラスト”チャンス。高松宮記念(G1)M.デムーロ「飛行機ポーズ」に持っていかれた7年前のすれ違いと、数奇な運命の巡り合わせ
前年の秋からコンビ結成となった浜中騎手とコパノリチャードは、スワンS(G2)や阪急杯を勝利。高松宮記念の最有力馬の1頭に数えられたが、浜中騎手はレース前日にドバイで開催されるドバイシーマクラシックのために遠征。コパノリチャードを泣く泣く諦め、前年のジャパンC(G1)2着馬デニムアンドルビーの騎乗を選んだのだ。
しかし、結果的にコパノリチャードはデムーロ騎手と共にG1初制覇を成し遂げた一方、精彩を欠いたデニムアンドルビーは10着に大敗……。浜中騎手にとっては踏んだり蹴ったりの結果となってしまった。
あれから7年。奇しくも浜中騎手に巡ってきたレシステンシアは、当時のコパノリチャードと同じ前哨戦の阪急杯を勝った超有望株だ。
さらに両馬とも同じ「ダイワメジャー産駒」で「阪急杯を逃げ切り」勝利、そして高松宮記念で「初の1200m戦」を迎えるところまで酷似していれば、なにか運命的なものを感じずにはいられないだろう。
また、阪急杯を勝利した北村友一騎手が泣く泣くレシステンシアの騎乗を諦め、クロノジェネシスに騎乗するため前日のドバイシーマクラシックへ遠征することも、当時の浜中騎手と重なるものがある。
無論、だからといってクロノジェネシスが敗れるとは限らないし、もし当時の浜中騎手がコパノリチャードに騎乗していれば高松宮記念を勝っていたかどうかは、競馬における“タラレバ”の世界の話だろう。
ただ、少なくとも競馬において、ちょっとしたボタンの掛け違いや、歯車の噛み合い方でレースの結果、そしてその後の運命が大きく変わることは決して珍しくはない。
運命的なすれ違いがあった2014年といえば、浜中騎手にとって年間125勝を挙げた、まさに全盛期の真っ只中だった頃だ。かつて「ポスト武豊」の最有力候補に名が挙がっていた名手は今こそ武豊騎手の代役を果たし、大先輩の無念を晴らせるだろうか。
昨年は38勝に終わり、デビューイヤーを除けばキャリアで最悪の成績だった。そういった意味でも今年の高松宮記念は「ジョッキー浜中俊」のラストチャンスになってもおかしくはない。運命を分かつ一戦になりそうだ。(文=浅井宗次郎)