「日米最強女王」と「岩手の女王」の頂上決戦・皐月賞(G1)……逆襲の異端児ロードクエストの反撃

ロードクエスト(競馬と景色の写真集より)

 俗に「ブラッドスポーツ」といわれる競馬の数百年は、ほんの一握りの優秀な血脈だけが残り続け、他は容赦なく淘汰されてきた弱肉強食の歴史そのものである。

 従って、今週末に開催される皐月賞(G1)に出走するような限られたエリート集団には、当然ながら弱肉強食の世界を牛耳ってきた名血を継ぐ馬たちが集まっている。

 重賞勝ち馬に姉を持ち、日本競馬史上最強馬として今やその血を持って競馬界を牽引するディープインパクトを父に持つマカヒキ。日本最大の競走馬セリ市『セレクトセール』において、2億4150万円という高額で取引された超良血馬サトノダイヤモンド。

 そして、史上初めて日本のオークス(G1)とアメリカのオークス(G1)を制した「世界の女王シーザリオ」を母に持つ、生まれながらに王者の資質を持ったリオンディーズ。

 これらが「空前絶後の大激戦」といわれているクラシック戦線で「三強」を形成し、第一弾となる皐月賞も、この3頭の争いが中心になるとみられている。

 その一方で、前走のスプリングS(G2)で単勝1.7倍という圧倒的な人気を背負いながらも3着に沈んだロードクエスト

 今や、昨年の新潟2歳S(G3)で後の阪神JF(G1)の2着馬を5馬身ちぎった時のような高い評価は見る影もなく、まるでクラシック戦線から脱落したような評価を受けている。

 ただ、それでもロードクエストとその関係者は、反撃の時を虎視眈々と狙っている。

 無論、前述した「三強」の壁は限りなく高い。それも今年の皐月賞は「史上最高のメンバー」ともいわれ、他のライバルも高い素質を持った良血馬ばかりだ。中でも特に1番人気が予想されるリオンディーズは、日米オークス制覇を成し遂げたシーザリオの仔。生まれながらにしてクラシック制覇を宿命付けられた「エリート中のエリート」だ。

 それに対してロードクエストを生産した北海道・様似堀牧場の堀利則氏は「クラシックに出られるだけでも、本当にありがたい」と話す。

 ロードクエストは産まれる前から、すでに波乱万丈の色を帯びていた。母マツリダワルツは岩手競馬で46戦7勝とタフに走り続け、「岩手オークス」と称されるひまわり賞も勝った馬。

 ただ、引退後は小さな馬体が懸念され、繁殖に上げずに「処分」が検討されていた。

 しかし、なんとかこの血を残していきたい馬主の意向で処分を免れたマツリダワルツは、様似堀牧場に移されて繁殖生活を送ることになった。繁殖牝馬7頭の様似堀牧場は、夫婦二人で切り盛りしているという。

 そんな牧場で生まれてきたのが、このロードクエストだった。

 この母に似て小柄なマツリダゴッホ産駒は、様似堀牧場の中では目立った存在だった。北海道サマーセールでついた売値は626万円。サトノダイヤモンドの1/40に過ぎなかったが、決して悪い値段ではなかった。

 何よりまず、様似堀牧場のような小さな牧場からすればロードクエストのように地方ではなく、中央競馬でデビューを迎えること自体が「エリート」といえた。ましてやロードクエストの新馬勝ちともなれば、様似堀牧場にとって約5年ぶりの中央競馬での勝利だった。

 そんな状況でロードクエストが昨年の新潟2歳Sに出走した際、様似堀牧場の堀氏は初めて北海道から本州へ応援に出掛けた。愛馬が勝った姿を見た際は、感動のあまり涙したそうだ。

 だからこそ、様似堀牧場のある様似町の期待を一身に背負うロードクエストが、1度や2度負けたところで、その関係者たちが「大望」を諦めるわけがない。失うもののない彼らは、何よりもこの晴れの舞台にたどり着いたことをまず感謝し、全力で立ち向かうのみだろう。

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