ターフを賑わせた「名牝」を悔やむ声止まず……「テンポイントの悲劇」から約40年の時を経ても変わらぬ思い。国内最大級の「掲示板サイト」が持つ意味とは
ターフを賑わせた一頭の「名牝」がこの世を去り、もうすぐ1週間が経とうとしている。
22日に中山競馬場で行なわれた第58回アメリカジョッキークラブカップ(G2)。勝負所の最終コーナーで、落馬した馬がいた。昨年のエリザベス女王杯(G1)で大波乱の立役者となり、大きな脚光を浴び始めたばかりのシングウィズジョイだった。
16頭が一塊に殺到した第4コーナー。勝負所で極めてタイトになった馬群の中で、いくつかの接触があった。誰も悪くなかった。皆、ただ勝ちたかっただけだった。だが、内から接触が連鎖して、紅一点のシングウィズジョイも外にはじけた。その拍子に前を走っていた馬の後脚に前脚が触れて、大きくバランスを崩した。
『おっと、落馬している!シングウィズジョイが落馬!』
そんなアナウンスと共に場内からは悲鳴が上がった。幸いなことに巻き込まれた後続はおらず、やがてC.ルメール騎手が立ち上がる。だが、シングウィズジョイの方が動かない。
馬が集団で、それも全力で走る競馬にこういったシーンは付き物だ。輝かしい勝利の栄光がある一方で、無念の内にターフを去る馬もいれば、こういった一瞬の”不幸”ですべてを失う馬も数え切れないほどいる。
そして、そんなことは競馬を愛する多くの者が知っている。心のどこかで覚悟もしており、それがどれだけ残酷なことなのかも、心の片隅に”しこり”のように残している。
だが、やがて動かないシングウィズジョイの周りにスタッフが集まると、競馬を知る者にとって「不吉の象徴」でしかない天幕が張られる。”それ”が何を意味するものか、その場に居合わせた多くの者が知っているからこそ、スタンドからは悲鳴のような行き場を失った「声援」があちこちから上がった。
後日、JRAの公式HPにはシングウィズジョイについて「競走中に疾病(左上腕骨々折)を発症し、予後不良」と書かれていた。通算16戦4勝。2015年のフローラS(G2)とターコイズS(新設重賞)が主な勝ち鞍となっている。
また競馬教室の講師として、レース当日の中山競馬場に居合わせた競馬ライターの井内利彰氏が後日、『netkeiba.com』内の自身のコラムでシングウィズジョイについて触れている。