「24年目で初めて」池添謙一も驚いた真夏の“珍事”、「おそらくない」JRAも認めた札幌記念(G2)のレアケース! 武豊や福永祐一もこだわる手綱の重要な役割

 ここで特筆すべきは、当時のレース映像をみれば一目瞭然な福永騎手の“神騎乗”ぶりだ。制御不能になったジェラルディーナをコーナーで曲がらせるために、福永騎手は自らの体重を利用。つまり“重心移動”だけで同馬をカーブさせると同時に、左側の手綱だけを使って馬を操縦する「神業」を披露している。

 そもそも手綱とは、人馬を繋ぐ重要な道具であり、騎手にとっては馬を制御するための必須アイテム。馬を車に例えるならば、運転する騎手にとって手綱はハンドルやブレーキである。

 ならば手綱が馬の口に絡まった池添騎手や、走行中に手綱が切れた福永騎手は、いわばハンドルが外れた状態で車を運転していたも同然。手綱で馬を制御できない状況は、ブレーキが効かなくなった車を運転しているようなもの。当然ながら、レースに参加している他馬への影響も懸念される。

 そんな状況でも冷静に対処して、無事故でレースを終えた福永騎手や池添騎手を見ると、やはりトップジョッキーたちの技量の高さには感心せざるを得ない。まさに「手綱は騎手にとっての命綱」。そんなことを再認識させられた札幌記念(G2)であった。(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

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