逃げの職人・武豊に託されたかつての「超新星」リアファル復活のカギを握るのは”天才”による特別な魔法ではなく「正攻法」だ
かつて日本における欧州競馬の先駆者として、後方でじっくりと脚を溜める競馬を率先して取り入れていた武豊騎手。アメリカ騎乗法「モンキースタイル」を日本競馬に取り入れたのが”レジェンド”岡部幸雄騎手だとすると、「スローペース症候群」ともいえる欧州の騎乗スタイルを日本に定着させたのは紛れもなく武豊騎手だろう。
そんな武豊騎手の1つの「完成形」が史上最高の追い込み馬ディープインパクトなのだろうが、その「溜め殺し」が馬主との軋轢を生み、やがて来る長期スランプの小さくはない原因になったともいわれている。
そして、長期スランプから完全に抜け出した今の武豊騎手は、昔の「追い込み」ではなく真逆の「逃げ」での活躍がとにかく目立つようになった。
年度代表馬キタサンブラックに代表されるように、国際G1を制したエイシンヒカリ、ダート路線でもコパノリッキーやケイティブレイブなどが活躍し、昨年は逃げに逃げて数多くのビッグレースを手にした武豊騎手。
今や、この天才騎手を語る上で、極めて精密な体内時計が作り出す絶妙なペース配分が最も活きる「逃げ」の技術の高さについて触れることは避けられないといえるだろう。
そんなJRAを代表する”職人”の元に、また一頭の逃げ馬からコンビ結成の依頼があった。11日の金鯱賞(G2)に出走が予定されているリアファル(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)である。
エリザベス女王杯(G1)と宝塚記念(G1)を制した女傑マリアライトの半弟となる本馬。デビュー当初は半兄クリソライトや近親アロンダイトの影響を受け、ダート路線を歩んでいたが、3歳夏に初芝となったマレーシアC(1600万下)を逃げ切ってから、競争人生がガラリと変わった。