池添謙一は大舞台でなぜ勝てるのか? 昨年の有馬記念(G1)伏兵ヤマカツエース大健闘の”裏”に見えた「勝負師」としての執念


 結果的にヤマカツエースが4コーナーを回った12番手という位置取りは、後方から何もできずに13着に大敗した宝塚記念(G1)の13番手を除けば最も後方のポジションだった。

 重賞4勝を誇るヤマカツエースの従来の勝ちパターンは、まくり気味に進出する早めのスパート。だからこそ、有馬記念のメンバー相手に12番手という位置取りは、本来なら絶望的といえる。

 しかし、その一見絶望的な状況は、徹底的にインに拘り「あえて」動かなかった池添騎手の「勝負師」としての一瞬の判断がもたらしたものだった。

 実は、レースは3コーナー手前でサトノノブレスが後に物議を呼ぶほどの”捨て身”でキタサンブラックにプレッシャーを掛けに行ったため、ラスト1000mから急激にペースが上昇。激流と化した流れは、一気にサバイバルの様相を呈していたのだ。

 それは勝ったサトノダイヤモンドが勝利したにもかかわらず、最後の3ハロンにキャリアで最も時計を要したことが、その凄まじさを物語っている。

 周囲がロングスパート合戦に移行した中でも、ヤマカツエースはギリギリまで動かなかった。各コーナーのポジション推移が[9-10-13-12]とまるでバテた馬のように下がる中、池添騎手は前を走っていたサムソンズプライドがバテて下がってきたため、最内の進路が完全に塞がれてしまう、そのギリギリまでスパートを我慢している。

 そこからのヤマカツエースのスパートは、まさに乾坤一擲の走りだった。

 結果こそ上位争いを演じた3頭からは1馬身1/4置かれた4着だったが、池添騎手がレース後に「直線で伸びるところで両サイドに閉じられてしまった。切り返すロスがなければもっと走っていた」と悔しがったように、内からシュバルグランに、外からサウンズオブアースに進路を塞がれ、進路を大きく内側に切り返している。これがスムーズだったら、大金星もあったかもしれないと思える、上がり最速の末脚だった。

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