JRA師弟コンビで見解不一致に「温度差」が見え隠れ!? ダノンザキッド惨敗、ダノンスコーピオン春全休……裏切りの連鎖で「7戦全敗」の絶不調
3月に入り、春のクラシックの足音も徐々に大きくなりつつある中央競馬。今週末には、中山競馬場で皐月賞トライアルの弥生賞ディープインパクト記念(G2)、阪神競馬場で桜花賞トライアルのチューリップ賞(G2)の開催を控えている。
前走からトライアルを挟まずに直行する有力馬もいれば、ステップレースを快勝して新たなクラシック候補として名乗りを上げた馬も登場し、晴れ舞台の出走権を懸けた戦いはこれから益々盛り上がりそうだ。
そんな大事なシーズンを前にいまひとつ好調の波に乗れていないのが、川田将雅騎手と安田隆行厩舎のコンビである。
今や日本を代表するトップジョッキーの一人といわれるまで成長した川田騎手は、新人時代に安田隆厩舎に所属。早々に頭角を現し、2006年にフリーの騎手となって以降も師匠との親密な関係に変わりはなく、現在も良好な関係が続いている。
2020年のホープフルS(G1)をダノンザキッドで制した際には、「師匠とともに、やっとG1のタイトルを取ることができて、何より先生に迷惑ばかりかけてきましたので……」と感極まった川田騎手は涙で声を詰まらせた。
また、安田隆調教師も「最高の気分です。川田騎手とのコンビでG1を勝てて、本当に嬉しいです」と、かつての愛弟子とのG1初勝利を喜んだ。
しかし、これまで好成績を残してきた師弟コンビも、今年に入って連戦連敗。先週の中山記念(G2)を1番人気で7着に敗れたダノンザキッドを含め、7戦全敗と結果を残せていない。
それも人気薄ならまだしも出走した7頭中6頭が2番人気以内で2着が2回。重賞も1番人気で2敗とファンの信頼を裏切り続けているのだから深刻だ。
■師弟コンビに不調の影
未勝利 ダノンアーリー、2番人気 7着
伊賀S(3勝クラス) スワーヴシャルル、2番人気2着
共同通信杯(G3) ダノンスコーピオン、4番人気7着
1勝クラス アグリ、2番人気2着
フェブラリーS(G1) レッドルゼル、1番人気6着
ブラッドストーンS(3勝) スワーヴシャルル、1番人気11着
中山記念(G2) ダノンザキッド、1番人気7着
また、出走馬最低の4番人気だったダノンスコーピオンにしても、実績的には1番人気になって不思議ではなかった実力の持ち主だった。
にもかかわらず、これほど人気が下がったことには、安田隆調教師と川田騎手の間に少なからず「温度差」が垣間見えたからにほかならない。
共同通信杯の追い切りで川田騎手が「間に合っていない。モタれ方がきつい。いい頃の動きがまだできていない」と厳しいジャッジをしたのに対し、安田隆師は「いい状態」「結果を出したい」と前向きなコメントを残していた。
それでも4番人気まで下がってしまったことは、川田騎手の歯切れの悪い言葉の方をファンが信じたからだろう。
さらには、中山記念を惨敗したダノンザキッドについても、指揮官からは「順調に仕上がっています」「距離も問題ない」という強気な言葉も出ていたが、川田騎手からは「まだ上に跳んでいる」と指摘があったという。
結果は周知の通りパンサラッサの作り出したハイペースの流れについていけず7着。レース後のコメントで川田騎手は「返し馬では抜群に具合はよく感じました」とフォローしたものの、「全く走る気になってくれませんでした」と振り返っている。
こちらについては「中山に嫌な記憶が残っているのか……」とも触れており、精神的なものも敗因に含まれているかもしれないが、状態に自信を見せていた指揮官との温度差を感じずにはいられない結果に終わった。
この日、阪神競馬場で開催された阪急杯(G3)は、ダイアトニックで見事に勝利した安田隆調教師。これまでもロードカナロア、カレンチャン、ダノンスマッシュなどの一流スプリンターを育てた腕利きだが、管理馬が制した最長距離のG1は、ダノンザキッドのホープフルSのみ。
得意とする短距離のレース以外では、どこかしら感覚の誤差があるのだろうか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。