JRA「世代最強馬」イクイノックスの皐月賞(G1)出走に黄色信号!? 賞金ボーダー上昇で除外の可能性も…
JRAでは来週の高松宮記念(G1)を皮切りに、いよいよ春のG1戦線が幕を開ける。6月末の宝塚記念に至るまで、ビッグレースが毎週のように開催される、競馬ファンにとっては嬉しい春の訪れである。
中でも一番の話題はクラシック戦線。特に今年は牡馬が大混戦の様相で、例年以上の注目が集まっている。1冠目の皐月賞(G1)まで1か月ということで、続々と各馬の参戦が報じられているが、一方で出走権をかけた争いも白熱。
今年は各馬の力が拮抗していることや、前哨戦を使わない「直行ローテ」を選択した馬が多いことから、OP競走の賞金が複数の馬に分散。その結果、例年以上に皐月賞出走への賞金ボーダーが高くなることが予想される。
こうした状況の割を食う形で、賞金不足のピンチに陥っているのがイクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)である。
イクイノックスは新馬戦を快勝すると、デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳S(G2)を圧勝。この段階ですでに「世代最強」との声が上がっていた。
当然次走はホープフルS(G1)へ挑むと思われていたが、まさかの回避。その後、皐月賞への直行が発表された。異例のローテとあってネット上では賛否両論であったが、この時点で収得賞金は2300万円。例年の皐月賞なら問題なく出走可能なラインであり、賞金不足を心配する声はほとんど無かった。
しかしここにきて状況が一変。現在のイクイノックスの賞金順位は、弥生賞(G2)で優先出走権を獲得した3頭を加えると10位タイ(ダートで賞金加算の馬を除く)。今週末のスプリングS(G2)、若葉S(L)で計5頭が優先出走権を獲得するが、この2レースに賞金上位の馬は出走しない。そのため実際のイクイノックスの賞金順位は、この5頭を加えた15位タイで3頭が並ぶ形となる。
皐月賞のフルゲートは18頭。ここに毎日杯(G3)で賞金加算される2頭やダート路線の馬、牝馬の参戦があれば、イクイノックスがまさかの抽選や除外の対象になる可能性も否定できない。
実際には賞金上位のトウシンマカオ、キングエルメスの2頭はNHKマイルC(G1)を目指すと目されており、よほどのことが無い限りイクイノックスの出走は可能と思われる。仮に毎日杯で賞金加算した馬がノーザンファームの馬であれば、同門のイクイノックスの出走機会を奪ってまで、中2週で皐月賞には出てこないだろう。
しかし無事に出走が叶ったとして、果たしてイクイノックスは勝利することができるのか。
確かに東スポ杯2歳Sの時点では、世代トップの評価を受けていた。だがその後はドウドュース、キラーアビリティ、ダノンベルーガといった大物新興勢力が次々と台頭。
さらに東スポ杯2歳Sで倒したアサヒは、次走の共同通信杯(G3)で0.8秒差の5着に敗れた。この敗北によって、イクイノックスの能力にも懐疑的な目が向けられている。アサヒは今週末のスプリングSに出走予定。この結果次第では、イクイノックスの評価も考え直す必要が出てくるだろう。
そもそも東スポ杯2歳Sから皐月賞への直行は、これほどの有力馬では前代未聞。成長著しい3歳の時期にレースを経験できていないことが、裏目に出る可能性もある。
皐月賞の舞台で改めて「世代最強」の力を証明できるのか。イクイノックスの挑戦から目が離せない。
(文=エビせんべい佐藤)
<著者プロフィール>
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。