大阪杯(G1)マルターズアポジーの前走がヤバイ……「サイレンススズカ級」の”暴走”押し切りに「有馬とは別馬」
無論、サイレンススズカは57.5kgで、こちらは56kg(そして前者は最後まで手応えに余裕があった)。競馬史上でも最強の1頭に数えられる名馬と比較するのは酷だが、それでも比較対象に上がるほど、小倉大賞典のパフォーマンスは「強烈」の一言に尽きた。
その一方で昨年の有馬記念では15着に大敗しているだけに、今回も単なる「テレビ馬」と思われれば占めたものだ。
500mの距離短縮はこの馬でなくとも大きく、何よりも距離を気にしなくていい2000mなら、有馬記念の1000m通過61秒などという”余所行きの競馬”ではなく、小倉大賞典で見せた1000m通過57.6秒という、この馬本来の競馬ができる。
また、武士沢騎手も『netkeiba.com』の取材に「この馬の競馬をするだけ」とコメント、「面白いレースを見せたい」とすでに腹を括っているようだ。
武士沢騎手は今年が21年目になるベテランだが、今年はまだ2勝。これまで最も良かった年でも年間24勝しか上げたことがない。昨年の福島記念も2008年の新潟記念以来、8年ぶりの重賞勝ちだった。
だが、玄人ファンの多くが知る関東を代表する穴騎手の1人でもあり、1年に何度か”大きな仕事”をしてくれる存在だ。
そして、マルターズアポジーもまた2007年の2歳王者ゴスホークケン産駒という、地味な血統の持ち主。わずか5頭の初年度産駒の1頭が本馬である。故郷の山岡牧場は、昨年の福島記念がJRA初の重賞勝利だった。
だがしかし、逃げ馬が「大きな仕事」をするときは地味であればあるほどいい。
キタサンブラックの”さじ加減”で天と地ほどの差がありそうだが、有馬記念のように楽に逃がしてさえもらえれば、今度は簡単に止まるつもりはないはずだ。
(監修=永谷 研(美浦担当))