JRAエプソムC(G3)横山典弘「ワープ失敗」も手のひら返しは禁物!? ジャスティンカフェを襲った立て続けの不運
12日、東京競馬場で開催されたエプソムC(G3)は、岩田康誠騎手の4番人気ノースブリッジが優勝。昇級戦を見事な勝利で飾って初重賞タイトルを手に入れた。昨年のクラシックへの出走は叶わなかったが、晩成タイプの父モーリスの血が近走の地力強化に繋がったのかもしれない。
その一方、1番人気の支持を集めたジャスティンカフェ(牡4、栗東・安田翔伍厩舎)は、勝ち馬から0秒1差の4着に惜敗。人気に応えることが出来なかった。
勝ち馬のノースブリッジ同様、重賞勝ちのなかった上がり馬が評価されたのは、32秒9の上がりで直線一気を決めた、前走の湘南S(3勝クラス)の内容を高く評価されたからだろう。
このレースでマークした東京・芝1600m戦(良馬場)の勝ち時計1分32秒3は、同日のメインレースであるNHKマイルC(G1)と同じタイム。それだけではなく、同時期に行われた東京のマイルG1のヴィクトリアマイル(1分32秒2)や安田記念(1分32秒3)とも遜色のないものであり、相対的にジャスティンカフェの評価が上がったことにも納得がいく。
それだけに、エプソムCを敗れたことで一部のファンから落胆を隠せない声も出ていたが、この敗戦には立て続けに襲われた「不運」も無関係ではないはずだ。
そもそも大目標の安田記念に出走が叶わなかった最大の理由は賞金不足。得意のマイル戦ではないが、距離が1ハロン延びた程度のG3なら、陣営としても克服できる自信があったに違いない。
最大の誤算となったのは、レース当日に急変した馬場かもしれない。
「土曜夜から雨の降った東京地方ですが、日曜は晴天に恵まれたこともあり、一時は芝ダート共に良まで回復していました。ところが、午後からの集中的な雨で一転して重馬場へと悪化。その結果、鋭い末脚が武器の馬にとっては、切れを削がれる馬場状態になりました。
また、手綱を取った横山典弘騎手の騎乗も判断が難しいところです。前走と同じく行く気がないのは平常運転でしたが、馬群から離れた最後方の位置から直線で内を突くコース取り。ゴール前で脚が鈍ったのは、伸びないインを走らされた影響もあったでしょう」(競馬記者)
12頭立てで行われた芝1800m戦。“いつも通り”の競馬を選択したジャスティンカフェと横山典騎手のコンビは、前を行く馬から約2馬身ほど離れた最後方から追走する。東京の長い直線を考えると、これくらいならまだ許容範囲に映るものの、ペースが上がった残り1000mを切った辺りで前の馬との差は瞬く間に広がった。
重馬場ながら1000m通過59秒7のペースは平均よりやや遅め。ここから先行馬群のさらに外まで回すには、かなりの距離のロスを覚悟しなくてはならない。
そこで横山典騎手が選択したのは、ライバル騎手が避けた伸びない内からの強襲。他の馬が外を回したことにより、コーナーワークでビハインドを相殺できたかに見えた。
これに応えたジャスティンカフェも最速上がり33秒5の切れを披露したまではよかったが、最後に脚が鈍って4着まで。ゴール前で他馬と脚色が同じになったのは、前半のロスか1ハロン長くなった距離なのかは分からない。
ただ、一つ言えることがあるなら、レース内容としてはそう悲観するほどではなかったということである。2012年の皐月賞(G1)でゴールドシップが見せたワープの再現はできなかったが、今回の敗戦のみで手の平を返すにはまだ早いと感じられる走りだった。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。