「お手馬不在」横山武史に迫る危機!? 北の大地で躍動も…秋G1リベンジは前途多難
6月から続いた夏競馬と共に北海道での開催も先週末で幕を閉じた。今年は白毛馬ハヤヤッコの函館記念(G3)での激走、ソダシを始めG1級の豪華メンバーが集結した札幌記念(G2)や3年ぶりに開催されたWASJなど、例年以上に大いに盛り上がった北海道シリーズ。その中でも最も北の大地のファンを湧かせた存在といえば、やはり横山武史騎手ではないだろうか。
函館で19勝を挙げて3年連続となるリーディングを獲得すると、札幌でも22勝を挙げて2年連続となるリーディングを獲得。昨年に引き続き北海道シリーズ完全制覇を達成し、全国リーディングも2位へと浮上した。
以前から得意としている北海道開催で多くの勝ち星を積み上げることに成功した横山武騎手。春のG1戦線では有力馬で凡走を繰り返すなど不振の印象が強かったが、夏競馬ではそうした心配を払拭する活躍を見せてくれた。「北海道競馬記者クラブ賞」を受賞した際、「秋はより一層精進して良い結果が残せるように頑張っていきたいと思います」とコメントしたように、逆襲の秋に向けてより一層気合が入っているはずだ。
秋G1リベンジは前途多難
だがこうした横山武騎手の意気込みとは裏腹に、秋のG1戦線では春以上に厳しい状況が見込まれる。
なんといっても最大の懸念は、最強の相棒・エフフォーリアの立て直しが遅れていることだろう。当初は天皇賞・秋(G1)を目指すと陣営が明かしていたが、脚部不安が改善されないことから今秋の復帰は白紙になってしまった。
今後については慎重に判断していくとのことで、状態次第ではジャパンC(G1)や有馬記念(G1)にも間に合わないケースも想定される。今春は精彩を欠いたとはいえ現役屈指の実力を誇るエフフォーリアの不在は、秋G1でリベンジを誓う横山武騎手にとって大きすぎる痛手である。
春のG1を共に歩んだパートナーの中では、レシステンシアも安田記念(G1)の後に骨折が判明した。復帰には3か月以上の休養が必要と報じられており、続報が無い事を考えれば10月頭のスプリンターズS(G1)はもちろん、11月のマイルCS(G1)への出走も不透明な状況だ。
その他のG1級お手馬となると、昨年の2歳王者キラーアビリティがいるが、クラシックの2戦では共に惨敗を喫している。次走は未定だが以前に斉藤崇史師が「(秋の目標に)菊花賞は考えていない」と語っていることを踏まえれば、古馬中距離路線へと挑むことが想定される。
しかし今秋の中距離戦線にはイクイノックス、シャフリヤール、パンサラッサを筆頭に多数の有力馬が待ち構えており、クラシックで苦戦を強いられたキラーアビリティが通用するかは疑問符がつく。春は本調子になかったとも考えられるが、相当の上積みが無い限り、今後のG1戦線で勝ち負けを期待できるとは言い難い。
このように横山武騎手が春のG1戦線で手綱を握った面々の現状を見ると、今秋のリベンジに向けて逆風が吹いている状況だ。夏競馬で新たに有力なパートナーを確保できていればよかったのだが、今夏は勝ち星の多さとは裏腹に重賞では1つも勝利できていない。
OPでの勝利も2鞍のみで、その内マリーンS(OP)で騎乗したフルデプスリーダーは次走で丹内祐次騎手に乗り替わって勝利。青函S(OP)を勝ったヴァトレニとは続くキーンランドC(G3)でもコンビを組み3着に好走したとはいえ、優先出走権も収得賞金も得られなかったことを考えれば、秋のG1に繋がるとは言い難い。
現状、G1で勝ち負けを狙えるような有力なお手馬はオークス(G1)で3着に好走し秋華賞(G1)を目指すナミュールただ1頭のみ。チャンスを掴むとしても、代打騎乗などの「棚ボタ」のケースに限定されるかもしれない。
昨年はG1レースで5勝を挙げ大ブレイクを果たしたが、今年の春G1では有力馬に多数騎乗しながらも2度3着があったのみで他は全て着外。秋のG1戦線でも有力馬への騎乗チャンスが少ないとなれば、今年は一転してG1未勝利に終わる可能性もある。
プロ野球などではブレイクした若手が翌年に不振に陥る「2年目のジンクス」と呼ばれる現象がある。横山武騎手も今年はG1未勝利、重賞もチューリップ賞(G2)の1勝のみと、重賞戦線ではまさにこの「2年目のジンクス」に苦しめられている。
リーディング2位と数字の上では好調だが、一方で大舞台ではほとんど結果を残せていない。今秋こそは重賞・G1で結果を残して実力を証明できるだろうか。苦境を乗り越えて再びターフで躍動する姿に期待したい。