【ケンタッキーダービー出走特別連載】託された思いと飽くなき挑戦。4人のホースマンの夢を繋いだ日本ダービー馬「絆(キズナ)」の物語<1>
さらに3歳の初戦となった弥生賞(G2)では一転して後方からレースを進めたが、勝負所で進路が塞がる不利もあって5着。クラシック出走に黄色信号が灯った。
だが、鞍上の武は弥生賞で見せたキズナの非凡な末脚に確かな手応えを感じていた。
続く「皐月賞への最終便」といわれる毎日杯(G3)では、広い阪神の外回りコースでキズナの末脚が爆発。2着に3馬身差をつける圧勝で、重賞初制覇と同時にクラシック出走の切符を掴んだ。
そこで陣営は、クラシック第一弾となる皐月賞(G1)の回避を決断。ローテーションの問題もあったが、それよりも小回りの中山競馬場ではキズナの本来のパフォーマンスが発揮できない可能性が高いと判断したのだ。
目の前の栄冠より、馬の特徴を優先した判断は正解だった。日本ダービー(G1)の前哨戦として挑んだ京都新聞杯(G2)で、キズナはさらに進化した姿を披露。佐藤から受け継いだ武の教育もいよいよ完成の域に近づいたのか、まったく危なげない勝ちっぷりで単勝1.4倍の圧倒的な人気に応えた。(続く)