【根岸S(G3)展望】蛯名正義調教師「岩田康誠→C.ルメール」新コンビ結成のテイエムサウスダンに注目!
冬の東京開催のオープニングを飾る重賞・根岸S(G3)が29日、東京ダート1400mを舞台に行われる。
このレースはとにかく脚質が重要で過去10年の4角通過順別の成績を見ると、2番手以内は「0-1-0-22」、4番手以内でも「1-4-2-44」と前に行った馬の低調ぶりが目立つ。一方で、5番手以下が「9-6-8-83」、10番手以下でも「6-3-5-47」と差し追い込み勢が好成績を残している。有力各馬の脚質にも触れながら展望していきたい。
今年の主役を務めるテイエムサウスダン(牡6歳、美浦・蛯名正義厩舎)は、昨年の当レースを4角7番手から豪快に差し切ったが、本来は先行タイプ。その後の競馬でも4角5番手以内で結果を出しており、今回はどんな戦法に出るのかにも注目が集まる。
中央・地方合わせてダートの短距離重賞を5勝しているテイエムサウスダンだが、昨年の根岸Sまでは地方での走りに比べて中央では苦戦を強いられていた。
しかし、6番人気で迎えた一戦でJRA重賞初Vを飾ると、続くフェブラリーS(G1)は逃げて2着。その後は勝利こそないが、7着に敗れた前走JBCスプリント(G1)以外は馬券に絡んでいる。
テイエムサウスダンにとって前走の敗戦は、大きな転機となるかもしれない。1年ぶりに掲示板を外したことで、2年前の黒船賞(G3)から10戦中9戦で手綱を取ってきた岩田康誠騎手が降板の憂き目に遭ってしまった。
『東京スポーツ』によると、蛯名調教師は「これまで乗ってくれた(岩田)ヤスが悪いわけではないけど、ここ2戦勝てていないので…」と岩田康騎手が降板に至った理由を説明。「厩舎として心機一転、違うジョッキーにお願いすることにしました」と、C.ルメール騎手に白羽の矢を立てたことを明かした。
ルメール騎手にはフェブラリーSと2レースをセットで依頼をしたようだが、重賞初勝利を狙う蛯名調教師の采配は吉と出るか、それとも凶と出るか。
そんなテイエムサウスダンの対抗格として名前が挙がるのは、昨秋の武蔵野S(G3)1~2着の2頭だ。
ギルデッドミラー(牝6歳、栗東・松永幹夫厩舎)は、3歳時にNHKマイルC(G1)で3着に入るなど、長らく芝のマイル路線で活躍。2~3着は何度もあったが、重賞制覇には手が届いていなかった。
しかし、昨年夏に新境地を開拓。ダート替わり初戦のNST賞(OP)で2年5か月ぶりの勝利を挙げると、続くグリーンチャンネルC(L)でも2着に好走。そしてダート3戦目の武蔵野Sでは先行勢が残る展開の中、4角7番手から上がり3ハロン最速タイの末脚で差し切り、重賞初制覇を遂げた。
ダート替わりで結果を残したのは、まさにオルフェーヴル産駒の成功パターン。さらなる飛躍に期待したいところだが、所属するシルクレーシングの規定でギルデッドミラーは今春をもっての引退が既定路線となっている。
根岸Sをステップに、フェブラリーSが引退レースとなるのか。限られた現役生活の中、重賞3連勝でのG1制覇を遂げるためにもここは通過点にしたい。
武蔵野Sでギルデッドミラーの後塵を拝したのが、デビューから9戦6勝、2着3回とパーフェクト連対を継続中のレモンポップ(牡5歳、美浦・田中博康厩舎)だ。
昨年1月から4連勝を飾り、満を持して武蔵野Sで重賞初挑戦を果たした。それまで見せた安定感抜群の勝ちっぷりが評価され、単勝1.7倍の1番人気。いつも通り好位から競馬を進めた。しかし、手応え良く直線に向いたところまでは良かったが、逃げたバスラットレオンをなかなか捕らえることができず。ゴール前でようやく交わして先頭に立ったものの、外からギルデッドミラーに差し切られ、ハナ差惜敗を喫した。
僅かの差で連勝は4で止まったが、今回は4戦4勝の東京1400mが舞台。このコースならギルデッドミラーだけでなく、テイエムサウスダンら実績馬を丸ごと飲み込んでもおかしくないだろう。
安定感という点でレモンポップに勝るとも劣らないのが、武豊騎手とのコンビで臨むヘリオス(セ7歳、栗東・西園正都厩舎)だ。
2年前のフェブラリーSでは最下位16着の屈辱を味わったが、その後は「2-4-2-2」の成績。2度の着外も4着と5着で、掲示板は一度も外していない。
昨年の当レースはスタートで遅れたにもかかわらず、4角4番手の“不利”な位置取りから2着に粘り込んでいる。武騎手は重賞2着4回のシルバーコレクターを初の重賞勝利へと導けるか。
2歳時に兵庫ジュニアGP(G2)を制覇したセキフウ(牡4歳、栗東・武幸四郎厩舎)にも勝機がある。
3歳時にはサウジアラビア→ドバイへと遠征を敢行。サウジダービー(G3)では2着に健闘した。国内外でダートの7ハロン戦に限れば、通算「3-0-1-0」と好成績を残しており、大駆けがあっても驚けない。
21年の川崎記念(G1)とかしわ記念(G1)を制したカジノフォンテン(牡7歳、船橋・山下貴之厩舎)はメンバー唯一のG1ウイナー。1年半以上も勝利には恵まれていないが、キャリア30戦目で初となる7ハロン戦で変わり身を見せられるかに注目だ。
他には、デビュー16戦目で初ダートのホウオウアマゾン(牡5歳、栗東・矢作芳人厩舎)、20年のレパードS(G3)を制したケンシンコウ(牡6歳、美浦・小西一男厩舎)、20年東海S(G2)覇者のエアアルマス(牡8歳、栗東・池添学厩舎)などが出走を予定している。
多くの馬にチャンスがある今年の根岸Sだが、中でもルメール騎手を起用してきたテイエムサウスダンは注目の的。発走は29日の15時45分を予定している。