JRA武豊「将来が楽しみ」「2戦目でいい方向」「ここまでいい感じ」からの評価大暴落、明暗分かれたハーツクライ産駒の分岐点
先週末の京都記念(G2)を2着馬に3馬身半の差をつけて圧勝したドウデュース(牡4、栗東・友道康夫厩舎)。この舞台で凡走の続いていたダービー馬だが、そんな負のジンクスを意に介さないダービー馬による75年ぶりVを決めた。次走に予定している3月25日のドバイワールドカップデーに行われるドバイターフ(G1)でも注目を集めそうだ。
ただ、凱旋門賞(仏G1)に挑戦した昨秋は、前哨戦のニエル賞(仏G2)で7頭立ての4着に敗れ、20頭立ての本番も19着と惨敗が続いた。国内復帰初戦に予定していたジャパンC(G1)を「中途半端な状態では出せない」として回避。屈辱のブービー負けから4か月ぶりの休み明けを懸念する声もレース前に出ていた。
結果的に全く問題はなかったものの、欧州の特殊な馬場で能力を発揮できなかったドウデュースに対し、燃え尽きてしまったのではないかと心配するファンもいた。奇しくも京都記念で人気を二分した2番人気のエフフォーリアが近走でスランプに陥っており、ドウデュースも他人事ではないと考えられても、おかしくない状況だったともいえる。
また、これに加えてオーナーのキーファーズ、主戦の武豊騎手、友道厩舎という組み合わせは、あまりにもあっけなく夢が萎んだアノ馬を連想するチームだったことも無関係ではない。
アノ馬とは昨年11月4日付で競走馬登録を抹消し、今後は乗馬になる予定と発表されたマイラプソディのことである。
同馬はドウデュースと同じくデビューから無傷の3連勝を決め、将来を嘱望された期待馬だったが、4着に敗れて初黒星を喫した共同通信杯(G3)をきっかけに連戦連敗。3連勝の後に13連敗と別馬のような転落ぶりだった。連勝時に残した陣営のコメントを振り返ってみると、当時に懸けられていた期待の大きさが伝わってくる。
上がり最速でデビュー戦を制した際には、武豊騎手が「追ってからが抜群。将来が楽しみ」とコメント。2着に5馬身差をつけた2戦目の野路菊S(OP)では「2戦目でいい方向に行っています。来年が楽しみです」、素質馬相手に初重賞勝ちを決めた3戦目の京都2歳S(G3)は「ここまでいい感じで来ています。まだ伸びそうなところがあるので楽しみです。精神的にも幼く、身体もまだ良くなると思います」と、徐々にトーンアップしていった。
同世代のライバルには、後に無敗で三冠を達成するコントレイルもいたのだが、ホープフルS(G1)を制した大物相手に対抗格の筆頭として、同じく3戦無敗のマイラプソディを挙げるファンが多くいたのも当然だろう。
明暗分かれたハーツクライ産駒の分岐点
クラシックを視野に入れる陣営が、近年の皐月賞(G1)と強い結びつきが目立つ共同通信杯だ。ここを制して4戦無敗でコントレイルに挑戦状を叩きつける青写真を描きたいところだったのだが、単勝1.5倍の断然人気を裏切るまさかの4着に敗戦。目に見える大きな不利やアクシデントもなかった中での凡走だけに、勝利を期待したファンや関係者のショックは大きかったはずだ。
これには武豊騎手も「具合は良さそうだったけど、ただ走らなかった。(敗因は)わからないね」、管理する友道師も「今日は先を見据えた仕上げではなく、しっかり仕上げてきたので敗因はわからない」と首を傾げるしかなかった。
結局、この初黒星から引退まで連敗を続け、かつての評価も大暴落したマイラプソディだが、以降も勝利を手にすることもなく引退した。順調なら凱旋門賞へ挑戦するプランも出ていた可能性があったかもしれないが、形は違えどもドウデュースの帯同馬としてロンシャンの地を訪れたことには、感慨深いものがあった。
4戦目を敗れて3連勝で止まったところまでは同じながら、再び上昇気流に乗ったドウデュースと、別馬のように連敗したマイラプソディ。いずれも成長力に定評のあるハーツクライ産駒ながら、こうまで違うのかと感じさせられた京都記念だった。